たまには具体的なファンドで教えてください。~ARK(アーク)助言の「グローバル・フィンテック株式ファンド」(2)~
今福 啓之
アモーヴァ・アセットマネジメント
今回言及するファンド
前回のコラムからの続きです。
波乱万丈な値動きの「グローバル・フィンテック株式ファンド」への2021年からの私自身の積立投資を振り返ってきました。
言うまでもなく、過去の値動きは今後について何も約束はしてくれませんが、それでも何かしらのヒントはあるはずと思い、お話を続けます。
当記事は当社社員の個人的な経験に基づくコラムであり、当社としての意見ではありません。また、当ファンドや投資銘柄への投資を推奨するものでも、今後の値動きを保証するものでもありません。あくまでもお客様ご自身の責任による投資判断をお願いします。
今後また大きく下がるかもしれない。それでも、「ゴールが先で覚悟が強い人」なら検討に値するかも。
前回のグラフを改めて見てみます。積立元本が285万円に対して577万円と2倍以上になっています。
基準価額は信託報酬控除後の1万口当たりの値です。信頼できると判断した情報をもとにアモーヴァ・アセットマネジメントが作成。上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。積立投資が必ず利益があがると保証するものではありません。
この結果の背景には、別のコラムで紹介した、いわゆる「ドルコスト平均法」の優位な面がたまたま大きく出ているという側面があります。
紫色のファンドの基準価額をよく見ると、積立スタートから現在までで、そんなに大きくは上がっていません。計算してみると+33.2%です。
にも関わらず、積立のリターンは102.6%と約2倍。「積立直後に大きく下がって戻って、30%上がっただけ」なのに、そこに積立していた私の資産は約2倍になっているわけです。
大きく下落した時期が長かったことで、その分低い基準価額で多くの口数を“仕込めていた”私の積立は、その後の上昇期に“ターボ”がかかったような上昇を享受していると考えられます。
私は以前から、「下がっても嬉しいのが投信の積立」とあちこちで言ってきましたが、まさにそれを体現したような推移だったといえます。
さて、では今後をどう考えるか。
冒頭に言ったように、今までの話は現時点でたまたま上手く行っている、私という1ケースの「結果論」です。今は上機嫌の私ですが、明日から再び暴落の憂き目を見ないとも限りません。
実は当ファンドが足もとで大きく上がっている理由のひとつに、最近の米国の政策がビットコインやステーブルコインなどの暗号資産に対して前向きだということがあるのですが、いつその風向きが変わるとも知れませんし、現在のAI(人工知能)ブームとその株式市場のあまりの盛り上がりようも、正直気になっています。
盛り上がりが大きければ大きいほど、その後の反動が大きいことは、まさにこのファンドが経験してきたことだからです。そのことが分かるグラフが次のファンド設定来(設定月の月末から)の積立シミュレーションです。
期間:2016年12月末~2025年9月末
基準価額は信託報酬控除後の1万口当たりの値です。信頼できると判断した情報をもとにアモーヴァ・アセットマネジメントが作成。上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。積立投資が必ず利益があがると保証するものではありません。
2016年12月に設定した当ファンドの基準価額は、3年ほどは順調に推移していましたが、2020年のコロナ禍の1年間は、今振り返ると異常にも映るような急上昇を見せました。
米国をはじめ世界中の政府がコロナ禍を受けて行なった、金融緩和や財政出動によるマネーのバラマキが、当ファンドの中の若く成長期待の高い企業の株価を押し上げることにつながったのです。
しかしその状況は2021年後半に一変、米国などの株式市場は下落局面に入ります。米国で生じていた激しいインフレの抑制のために、利上げなどの金融引き締めが強硬に実施されたのが主な背景です。
特に当ファンドが組み入れていた銘柄は、他より顕著に上がっていたこともあって、一般的なインデックスよりも大きく下がり、上のグラフのような推移となりました。
しかし、それでもグラフから改めて感じることは、「やはり積立にとって、変動が激しいのは悪いことでないのだな」ということ。この約9年の積立結果は、積立元本530万円に対して、評価額が1,321万円です。
同じ期間を世界株式指数で計算すると、以下の通り1,204万円の評価額です。「グローバル・フィンテック株式ファンド」はあれだけ下がったのにも関わらず世界株の積立を上回っており、その変動の大きさとその後の上昇の仕方が効いていることが分かります。
「世界株式指数」はMSCIワールド指数(税引後配当込み、米ドルベース)をアモーヴァ・アセットマネジメントが円換算。グラフ起点を10,000円として指数化。なお、基準価額の算出方法に対応させるため、前営業日の値に当日の為替を適用して算出。上記指数は当ファンドのベンチマークではありません。上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。積立投資が必ず利益があがると保証するものではありません。指数の著作権等の知的財産権その他一切の権利は、各指数の算出元または公表元に帰属します。
念のため強調しておきたいのですが、私は決して世界株式指数への積立よりも「グローバル・フィンテック株式ファンド」への積立の方が優れていたとか、賢い選択だったと言いたいわけではありません。
世界株式指数への積立なら、前回見たように、冴えない時期が長くあっても評価損に転じることはなかったので、きっと多くの人は積立を途中で止めずに今まで継続できていることでしょう。
しかし「グローバル・フィンテック株式ファンド」で積立を行なっていた人はどうでしょうか。一時期47.5%もの含み損を得ても積立を継続した私のように鈍感な人ばかりではないはずです。
さて。ということで考えるべきポイントは、「仮にまた大きく下がることがあったとしても、自分がお金を必要とする“最後の最後”の時には上がっているかどうか」――。
ここに一定程度の確信と覚悟が持てるなら、世界株式指数などのインデックス積立に組み合わせる(追加する)積立銘柄として検討に値するのではないでしょうか。
ARK Invest—“頑固一筋”イノベーション特化の運用会社
金融(ファイナンス/Finance)とテクノロジーを掛け合わせた「フィンテック」をテーマとする当ファンドですが、そのコンセプトは重厚で、「社会や生活を根底から変えてしまうイノベーション」という視点に立脚しています。
こうした「社会変革を起点とした投資」は、一般的なアクティブファンドの運用よりもより長い時間軸と、(金融知識ではなく)イノベーション技術そのものに対する深い研究が求められる、ある種特殊な投資です。
そのため当社は2017年にARK(アーク)という、創業から3年しか経っていない「イノベーション投資」特化の米国の運用会社と提携しました。創業10周年を経て、今や「イノベーション投資の旗手」として著名になったキャシー・ウッドが率いる、イノベーション投資に特化した米国の運用会社です。
当社アモーヴァ・アセット(旧 日興アセット)は、彼らの技術そのものへのリサーチ力と(当社ファンドに対する)銘柄助言を活用して複数のファンドを運用していますが、今日取り上げた「グローバル・フィンテック株式ファンド」は、そんな当社とARKとの協業ファンドの第1号ファンドです。
彼らはずっと前からブロックチェーンという、ビットコインなどの暗号資産の技術的基盤に着目し、深い研究を行なっていました。その過程で発掘される投資銘柄は、私達にとっても新鮮で、時代の先を行く着眼点からの投資アイデアでした。
また彼らは、AIにもかなり早い段階から着目し、研究を深めていました。単に「AI銘柄」で投資リターンを得るという視点ではなく、彼らが信じる各分野の破壊的イノベーションを飛躍させる重要な“触媒”としての着目です。
今日はこれ以上深追いしませんが、ARKと約10年にわたって協働してきた私達からすると、今になって株式市場が暗号資産関連銘柄で盛り上がったりしているのを見ると、「ようやく(市場全体として)気付いてくれたのか・・・」と感慨深い気持ちにもなるのです。
とはいえ、感慨にふけっていても仕方ありません。いくらARKが有望と考える企業であっても、株式市場で皆に認められるのが20年後では困るのです。ARKは技術への理解を深めると共に、現実の株式市場での理解や消化度合いとのバランスも留意し、私達に投資銘柄の助言をしてきました。
それが足もとの暗号資産関連のように、市場が追いついて花開くこともあれば、早すぎて成果を見ないまま見直すこともあるでしょう。それこそがイノベーション投資におけるアクティブ運用というものです。
やや難しい話になってきたのでこれくらいにします。もう少しお話したいことがあるので、次回に。
当記事は当社社員の個人的な経験に基づくコラムであり、当社としての意見ではありません。また、当ファンドや投資銘柄への投資を推奨するものでも、今後の値動きを保証するものでもありません。あくまでもお客様ご自身の責任による投資判断をお願いします。
※各指数の著作権等の知的財産権その他一切の権利は、各指数の算出元または公表元に帰属します。
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