日本株ってどうなの?
今福 啓之
アモーヴァ・アセットマネジメント
結論
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日経平均株価が6万円の水準にあっても割高感が強くなく、直接的な為替リスクもない日本株式は、検討の価値がある。
日経平均株価の4万円台乗せ(2024年3月)や5万円突破(2025年10月)、そして6万円台の定着へのチャレンジに、多くの日本人は違和感を覚えているかもしれません。
「なんでこんなに上がっているの?」
「人口の減る日本に未来はない――のではなかったの?」
そんな声が聞こえてきそうです。
さて、私たちは日本株式のファンドを買った方がいいのでしょうか。それとも、そんな声には耳を貸さず、S&P500やオール・カントリー指数のインデックスファンドを買って「放ったらかし」にしているのが正解なのでしょうか。
確かに米国株式はよく上がってきたが・・・
S&P500など米国株式や、米国株式比率の高いオール・カントリー指数などのインデックスファンドは確かに、日本人の投資の定番となりました。
もちろん世界をリードする米国株式は外せない選択肢ですが、株式リターンの「実力」を見るために為替の影響を除外してみると、意外な事実が見えてきます。
主要株価指数の推移
(日本株式は円ベース、それ以外は米ドルベース)
赤紫の線がTOPIXという日本株式を代表する指数で、濃い紫の線がS&P500。今に至る上昇相場の起点ともいえる2020年1月から比較すると、日本株式は実はS&P500と「いい勝負」であり、足もとでは凌駕さえしています。
でも、ずっと米国株式だけが突出して良かった印象や情報ばかりだったので、違和感を覚える方は多いはず。その理由は為替です。
過去約6年間の米ドル(対円)の推移
以前のコラムでも取り上げたように、海外資産の投資における為替は、「円高残念・円安ラッキー」なものですが、この期間の米ドルの対円レートは実に46%もの円安に進んでおり、いわば「超ラッキー」な期間だったといえます。
株式の上昇に、為替による46%ものプラスが上乗せされていた、つまりアメリカ人のS&P500の投資家よりも、日本人の私たちには46%分の「追加リターン」があったのです。
こう考えると、今後の円高が怖くなりますが、為替ばかりは読めませんし、長期保有で価値が上がると期待される株式とは異なり、長期保有によって(日本人に都合の良い)円安になるというものでも、まったくありません。
しかし忘れてならないのは、あくまで「主役」は株式だということ。「脇役」の為替で投資判断するという主客転倒に陥るのは大きな間違いです。
したがって、「悩ましいけど無視」、あるいは複数の国の資産を持つことによる「為替も分散」——それが日本人の為替変動リスクに対する基本態度だと、私は長年考えてきました。
一方で、今後の円高リスクが気になって投資を躊躇してしまう悩ましさもよく理解できます。そうした観点からも、直接的な為替リスクのない日本株式の意義が高まっていると考えています。
でも、日本株式はもう高すぎるのでは?
それでも、ここから日本株式を検討しようとする際、「さすがに日経平均6万円は高すぎるのでは?」と思う人は少なくないかもしれません。
しかし株価水準について、「6万円はさすがに・・・」などと単なる印象論で語っていても仕方ありません。「日本はダメだが、アメリカは良さそう」といった漠たる国家イメージで語るのと同様、ほとんど意味のないことです。
なぜなら、指数との連動をめざすインデックスファンドであっても、より良い企業を選別しようとするアクティブファンドであっても、株式投資とは個々の企業に対して行なわれるものですし、日経平均株価やS&P500といった指数は、その個々の株価の積み上げでしかないからです。
たとえば、S&P500がこれまで素晴らしいリターンを示したのは、アメリカという国家が優れていたからではなく、S&P500が計算ルール上重きを置く超大型株(ここ数年は巨大IT企業)の株価が好調だったからに他なりません。
同様に、日本株式が足もとで上がっているのは、日経平均株価なら日経平均株価の計算ルール上で重んじられる企業の株価が上がっていた結果であり、その企業の株価が上がっているのには、多くの場合、何らかの理由があります。
日本の人口が減っていくのだとしても、そもそも業績が日本の人口の多さだけに依存するような企業以外にとっては、ほとんど関係のないことです。仮にそういう企業であっても、付加価値が高く利益率が高い事業で成功していれば、その株価は上昇しそうです。
繰り返しになりますが、指数の水準の印象や国家論で語っても意味はないのです。言うまでもないことですが、「日経平均株価」という株を、誰かが何となく買っているわけではありません。個々の株価の裏には必ず企業活動があり、多くの場合、その企業の利益(の成長)によって株価は決まっているのです。
以下のグラフをご覧ください。私が社会人になる直前の1989年の年末、日経平均株価は当時の史上最高値である38,915円を付け、そこから本当に長い低迷期に入りました。
しかしグラフの下部にあるように、企業の利益は1989年の頃の16.6兆円(1部上場企業の合計)から、今や81兆円と何と約5倍になっています。
株価の推移と企業の利益の推移
株価は今、当時の約1.5倍の約6万円ですが、利益の方は5倍。つまり企業利益との対比において、少なくとも6万円が馬鹿げた、理屈の付かない割高水準とはいえません。
むしろ、長年のネガティブイメージのせいで見えなかった(見ようとしなかった)日本企業の「稼ぐ力」に気付く人が増えてきたというのが、日経平均株価6万円の背景です。
残念ながら、気付いて増えてきたのは海外投資家がメインであり、日本人の多くはまだまだ本気で日本株式を買えていないようです。個別株式でもそうですし、日本株式のファンドにおいても、本気で資産運用のパーツとして皆が積極的に取り入れているようには見えません。
しかしそれはまだ、バブル期のような過熱状態には至っていないということでもあり、これから日本株式への投資を考えようとする人にとっては良いことです。
日本株式の予想PER推移
グラフにあるPER(ピー・イー・アール)とは、株価を利益で割って求める倍率のこと。企業が稼ぐ利益に対して、株価が上がるほどにその倍率は高くなり、利益に対する割高・割安を判断するために使われるモノサシのひとつです。
もし利益の増加率と同じだけ株価が上がるなら、割り算の結果であるPERは変わらないことになります。
ここまでの日本株式は、まさにその状況にあります。グラフの赤紫の線が示すように、株価(TOPIX)が大きく上昇しているにも関わらず、日本株式のPERは過去の平均(オレンジの線)を大きく超えていません。これはつまり、「企業の利益上昇を伴った、健全な株価上昇だった」ことを意味しています。
どんな日本株式ファンドを選ぶべき?
米国株式よりむしろ割高感が小さい日本株といえますが、重要なのは日本企業が今後、さらなる利益拡大をできるかどうか。そして、その力を私たちの資産運用に活かすには、どういった日本株式ファンドを選ぶべきか――。
株式投資の本質が個々の企業である以上、そのファンド選びのポイントはやはり、利益を伸ばす企業や業種は何か――。これは日本株式に限らない、株式ファンド選びに共通の重要な着眼点です。
今後もGAFAM(ガーファム/Google・Apple・Facebook(現Meta Platforms)・Amazon・Microsoft)が利益を伸ばすと考えるなら、それら時価総額の大きな企業に重きを置かれるS&P500のインデックスファンドは、引き続き効率が良いでしょう。
一方、それら米IT企業の今後の命運を握るのがAIビジネスだと考えるなら、実はそれを支えているのが日本の半導体材料や半導体製造装置関連の企業であることは、ぜひとも知っていただきたい事実です。
「日本株式を本気で持つ」にあたり、日経平均株価やTOPIXのインデックスファンドを選ぶのも決して悪いことではありません。特にTOPIXは2026年10月から大規模な見直しが予定されており、より良い指数になっていくと期待されます。
一方で、世界と戦える、あるいは世界の成長の恩恵を受ける日本の企業がたくさんあること、そしてそれを束ねた魅力的な日本株式ファンドがあることも事実。まだ日本では大きな波になってはいませんが、今後、米国株式や世界株式に次ぐ「株式の柱」として、日本株式をいよいよ本気で買う人が増えてくる予感がします。
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今福 啓之
アモーヴァ・アセットマネジメント