日経平均が6万円?7万円?
今福 啓之
アモーヴァ・アセットマネジメント
結論
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日経平均株価の計算方法を少し知ることで、日経平均がいいのかTOPIXがいいのか、などを自ら主体的に考えられるようになる。
日本株式が注目を集めて久しく、いつの間にか「日経平均6万円!」どころか「7万円台!」というニュースも耳にするようになりました。
オール・カントリー指数やS&P500のインデックスファンドなどに、日本株式のファンドを加えようかどうかと迷っているうちに、もうとても買えないバブルの水準になってしまったのでしょうか。
一方、足元では値動きが荒くなったりもしているよう。先日も中国企業が安価なAIモデルを発表したことなどをきっかけに、世界のAI・半導体関連銘柄が下落するような局面もありました。
どちらにしても気になりますね。少し考えてみます。
「額」でなく「率」で考える
日経平均が終値で6万円台に初めて乗ったのは、2026年4月27日でした。そして7万円台に乗ったのは6月18日。
わずか2ヵ月弱で1万円上がったわけです。専門用語になりますが、確かに史上最速の(6万円台から7万円台への)「大台替わり」でした。
これをテレビのニュースで見た私の妻は、「なんで、こんなに日本の株は上がってるの?」と素朴に聞いてきました。確かに疑問に思うのも無理はありません。
でも私が小難しい話の前に妻に言ったことは、「6万円にとっての1万円なんて大したことないんだよね」でした。
この例で分かるように、日経平均1万円の時の「大台替わり」、つまり2万円への上昇率は100%(2倍)ですが、6万円から7万円の上昇はというと、わずか16.7%です。
ニュースが「史上最速で」と騒いだ6万円から7万円の上昇でしたが、実は16.7%上がったというだけの話なのです。
以前のコラムにも書きましたが、この「額」でなく「率」で考えることの重要性は、私たちが持つ各ファンドの基準価額の変化に対しても、そのまま当てはまります。
例えば持っているファンドの基準価額が300円下がったと聞くと少しビックリしますが、30,000円のファンドだったなら、それはマイナス1%のこと。株式100%のファンドなら普通に起こりうる変化率です。
一方、もし10,000円のファンドが300円下がったとなると、理由を調べてみてもいい、まあまあ大きな下げといえます。
日経平均は「日本全企業の平均」ではない
日経平均は「今日のお天気は?」と同じくらい普通に、ニュースなどで報道されています。そんなに皆、株式投資をしているのだろうかと、不思議に思うくらいに一般的です。
でもその中身を知っている人は多くないはず。私の妻もきっと、「日本企業の株価は皆、すべてグイグイと上がっているもの」と思っているのでしょう。
そんなことはありません。
そもそも日経平均(日経平均株価/日経225)とは、日本経済新聞社が各業種を代表する企業225社を選んだ上で、そのそれぞれの株価を用いて算出・発表している指数(インデックス)です。
東京証券取引所のプライム市場というところに上場している企業から、業種ごとに数社ずつの企業が選ばれているのですが、現在のプライム市場の上場企業数は約1,550社なので、225社はその14.5%程度に過ぎません。
つまり、毎日ニュースであれだけ報道していながら、実はほんの一部の企業の株価の話でしかないということです。
そしてここからが面白い、というか重要な特徴なのですが、日経平均は225社の株価を全部足して225で割る「単純平均」で算出されています。
正確には、225で割ったのは指数算出の最初の時だけで、その後は指数としての連続性を保つための様々な調整をして今に至っているのですが、考え方としては単純平均という理解で差し支えありません。専門的には「株価平均型」の指数といいます。
S&P500やオール・カントリー指数は、それとは異なる「時価総額加重型(方式)」で計算されています。両者の違いについては過去のコラムに譲るとして、大事なのは「日経平均の計算方式だと何が起こるか?」への理解です。
高株価の企業が日経平均を動かしている
結論を先に言うと、「株価が高い銘柄ほど、日経平均に大きなインパクトを与える性質がある」ということです。
日経平均が225社ではなく2社の平均だと考えると分かりやすいでしょう。以下のように、A社は株価10,000円でB社は2,000円。「株価平均型」で計算する日経平均は6,000円となります。
さて、そこからA社の株価が1割も上がったとします。B社の株価は変わりません。日経平均はどうなるでしょうか。
このように10,000円が11,000円になることにより、日経平均は6,500円と、8.33%上がりました。
ではA社の株価は変わらず、B社が同じ1割上がった場合はどうでしょう。以下の通り、日経平均は6,100円。先ほどの8.33%の上昇に対してわずか1.66%の上昇です。
A社もB社も株価は1割上がったのですから、もしそれぞれに100万円投資していれば110万円になります。株価が10,000円だろうが2,000円だろうが関係ありません。「額」でなく「率」なのですから。
しかし日経平均への「インパクト」という点では、A社とB社ではまったく違います。つまり、株価が低い銘柄よりも、高い銘柄が上がった方が、日経平均はより上がるのです。
具体的に今の日経平均の「顔ぶれ」を見てみましょう。昨日(2026年7月22日)時点の、日経平均構成銘柄225社の株価を調べてみました。
日経平均の構成銘柄と株価(一部)
先ほど見た通り、この表の上の方にある銘柄の株価が上がる方が、日経平均はより上がります。
正確にはきっちり100%、この順番通りにインパクトが大きいわけではありません。詳しい説明は省きますが、指数の連続性が保たれるような各種調整を行なっているためです。
分かった上でなら、日経平均は結構アリかも
さて、では最後にまた「日経平均7万円」の話に戻ります。
まず、「7万円だなんておかしい!バブルだ!」と、単なる直感だけで語るのは正しくなさそうです。
6万円は16.6%の上昇で7万円になりましたが、7万円は14.2%上がるだけで8万円になってしまいます。そして仮に(7万円から)42.8%上がれば10万円です。
今「日経平均10万円」なんて言うと変な目で見られそうですが、私は決して相場の予想をしたいわけではなく、まずは単純な算数によって考えてみることが大切だと思っているのです。
そして、8万円のための14.2%や10万円のための42.8%の上昇には、先ほどの表の上の方の銘柄に上がってもらうのが良さそうです。
もうお気づきかもしれませんが、それら株価が高い銘柄群の多くは今、「AI・半導体関連」の企業です。数年前から世界的にAIの進化や、それを支える半導体への需要が非常に旺盛になっており、株式市場もそれを反映して関連銘柄が大きく上昇しています。
オープンAIやアンソロピックがつくる生成AIモデルや、エヌビディアの設計する最先端半導体の開発分野などは米国企業が主導していますが、実は日本にはそれら企業が必要とする半導体の部材や製造工程において、世界的に高い競争力を持つ企業が数多くあります。
あくまで先ほどの表の10位までだけを見て、該当しそうな企業に説明を加えるとこんな感じです。
日経平均を7万円まで引っ張ってきたひとつの原動力が、こうした企業に対する、世界的なAI・半導体需要だったということです。
日本株式全体の指数と思われがちな日経平均ですが、実態としては、米国を中心地に世界で進化する「AI・半導体のイノベーション動向」を反映する側面も強く持っているといえます。
こうした側面をしっかり理解した上で、
● 直接的な為替リスクがない日本株式で、
● AI・半導体のテーマ投資までは絞り込まず適度に、関連する日本企業の株価上昇を享受する
――ためのツールとして日経平均のインデックスファンドなどを活用するというのは、ひとつの考え方です。
しかしこれは良いことばかりではなく、AI・半導体分野に「逆風」が吹く時には、日経平均にもマイナスの側面が強く出るということでもあります。
(別の指数算出ロジックの結果として)より「AI・半導体関連色」が濃いS&P500やナスダックほどではないにせよ、日経平均はAI・半導体関銘柄に、上にも下にも影響を受けやすい指数だということです。
もしそれを懸念するなら、同じ日本株式のインデックスファンドであっても、日経平均ではなくTOPIX(東証株価指数)の方が望ましいでしょう。
実際、両者は今、以下のような乖離(かいり)を見せています。AI・半導体関連株が中心となって日経平均を強く引っ張ってきた結果です。
日経平均株価とTOPIXの推移(日次)
AI・半導体関連に、(マイナス期の試練も“覚悟”の上で!)長期的な期待をするなら日経平均、もっとフラットに、幅広く網を張っておきたいならTOPIX――といったところでしょうか。もちろん、ユニークなコンセプトで日本企業の成長をとらえようとするアクティブファンドにも、最近は注目に値するものが多くあります。
「日経平均が7万円なんておかしい!」といった直感からくる思考停止、あるいは買ってみたものの少しの利益で売却する短期売買指向から一歩踏み出し、私たち日本人の有力な「長期・分散ツール」としての日本株式について、今だからこそ改めて、しっかりと考えてみたいところです。
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今福 啓之
アモーヴァ・アセットマネジメント