資産形成に節約は必要ですか?
加集 勇夫
アモーヴァ・アセットマネジメント
結論
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資産形成の基本は、「収入を増やす」「支出を減らす」「運用で増やす」の3つ
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節約は大切だけど、資産が増えると運用のインパクトが大きくなる
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将来への備えと今の生活の充実を両立できるペースで続けることが重要
2026年上半期、「NISA貧乏」という言葉が話題になりました。将来への不安から日々の支出を極端に切り詰め、その分を投資に回す人が増えているというもので、国会やメディアでも取り上げられました。
確かに、資産形成を進めるうえで節約は大切です。しかし、投資資金をねん出するために今の生活を犠牲にしないといけないのかと、疑問を抱いた方もいるのではないでしょうか。
そこで本稿では、資産を増やす基本的な考え方と、無理なく続けられる資産形成について考えてみたいと思います。
資産を増やす3つの要素
資産形成というと投資ばかりが注目されがちですが、資産を増やす方法は大きく3つあります。それは、「収入を増やす」「支出を減らす」「運用で増やす」の3つです。
資産を増やす方程式
資産を増やす方法の一つ目は、「収入を増やす」です。会社員であれば昇給や転職、副業などによって収入を増やせる可能性があります。支出が変わらなければ、増えた分はそのまま資産として溜まっていきます。
次の要素が「支出を減らす」です。通信費や保険料、日用品などを見直すことで、家計の無駄を減らせるかもしれません。収入が同じでも支出が少なければ、その分だけ手元に残るお金は増えます。
そして、「収入-支出」で捻出されたお金は、貯蓄や投資に回せる資金になります。もちろん、運用などをしなかったとしても、収支がプラスなら資産は増え、逆にマイナスなら資産を取り崩すことになります。
3つ目の要素が「運用で増やす」です。収支をプラスにすることで積み上げた資産は、それをどのような形で保有するかによって将来の増え方が変わります。
預貯金は価格変動がない一方で利回りも低く、株式や投資信託などは価格が上下する代わりに高いリターンが期待できます。近年はNISAへの関心の高まりもあり、使う予定のない資金を運用しようという考え方が浸透してきたように感じます。
資産形成とは結局のところ、「収入」「支出」「運用」の3つを組み合わせながら進めていくものだという点を、まずは押さえておきましょう。
資産を増やす方程式の具体例
節約し過ぎで失うもの
ここで改めて「NISA貧乏」という言葉について考えてみましょう。背景にあるのは、多くの人が抱える将来への不安です。
「年金だけだと老後資金が足りないかもしれない」
「物価上昇が続くかもしれない」
「医療費や介護費用が心配」
こうした将来の不安があるからこそ、「もっと資産を増やさなければならない」「切り詰めた生活をしないといけない」という気持ちになる。これは自然なことだと思います。
実際、支出を減らせば投資に回せるお金は増えます。資産形成という観点では、多少無理をしてでも運用資金を確保するのは合理的な行動といえるでしょう。
しかし、支出を減らすことばかりに意識が向いてしまうと、失うものもでてきます。例えば、食費を過度に削れば健康を損なうかもしれません。資格取得や学びへの支出を控えれば、将来の収入を増やす機会を逃す可能性があります。旅行や趣味、人との交流に使うお金も減ってしまうでしょう。
もちろん、節約そのものをゲーム感覚で楽しめる人もいますし、お金をあまり使わない生活に満足感を覚える人もいます。ただ、それが性に合わない人にとっては、捉え方が大きく異なります。
そういう人からすると、将来の安心を手に入れるための節約が、現在の生活の満足度を大きく下げる行為になってしまいます。一時のことであれば我慢できるかもしれませんが、それを何年にもわたって続けるのは、精神的にタフでなければ難しいでしょう。
資産が増えると大きくなる運用のインパクト
節約が資産形成に有効なのは間違いありません。ただし、その効果は資産の大きさによって変わってくることは、意外と見落としがちです。
資産がまだ少ない段階だと、利回りが余程高くない限り資産運用のインパクトは小さいため、毎月の節約によって投資に回せるお金を増やす方が資産を増やす効果は大きくなります。しかし資産が増えてくると、節約による増加分のインパクトは徐々に小さくなっていきます。
例えば、収入・支出・利回りが同じでも、資産が10万円の人と1,000万円の人とでは、資産の増え方に大きな差が生まれます。こうしたことから、資産が少ないうちは、運用利回りを上げるよりも収入を増やしたり、支出を減らすことに取り組んだりする方が、資産を増やすうえでは効率的だといえます。
資産の多さによって変わる節約のインパクト
NISA貧乏に関する記事の中には、「NISAの年間投資枠360万円を埋めるために極端な節約を続ける人がいる」といったことが紹介されていました。もちろん、それ自体は悪いことではありませんし、その人に倣って資産形成を頑張ろうと思った人もいるはずです。
しかし、資産形成がある程度軌道に乗り、運用というエンジンが働き始めたなら、節約で引き締めていた財布を少し緩める余裕を持ってもいいかもしれません。もちろん収入が支出を上回る赤字家計になるのは回避した方がいいでしょう。それでも、毎月の外食を1回増やすとか、気になる家電やガジェットを買うといった、現在の生活の満足度を上げるための支出を節度を持って増やすことは、決して悪いことではないはずです。
「もっと増やしたい」が止まらない理由
節約と同じように資産形成を始めると、意外と陥りやすいのが「もっと増やしたい」という感覚です。
当初は老後資金や子どもの教育資金など、一定額を期日までに作るために始めたものが、いつの間にか、「まだ足りないかもしれない」「もっと増やしたい」と思うようになることがあります。
そうした気持ちが強くなると、必要以上にお金を使うことを避けるようになり、節約や運用で資産を増やすこと自体が目的になってしまいます。
だからこそ、資産形成では目標を持つとともに、それを常に意識することが大切です。目標がない中での資産形成は、ゴールのないマラソンをし続けるようなもの。一方、「どれくらい貯めればいいか」という目標があれば、自ずとペース配分も分かり、今の生活のために使ってもいいと思えるお金のことも考えやすくなります。
長く続けられる資産形成をめざそう
例えば、10年後までに1,000万円の資産を作ることを目標にした場合を考えてみましょう。運用をしない場合、つまり年利0%のときには毎年100万円を積み立てる必要があります。一方で、運用によって一定のリターンが得られるなら、必要となる積立額が少なくなります。
もちろん、年10%や15%のような高い利回りを毎年実現し続けることはできません。それでも、資産運用を活用することで、資産形成に必要な負担を軽減できる可能性があるのは事実です。
10年かけて1,000万円を作る場合の利回り別積立額
収入を増やすこと、支出を減らすこと、そして資産を運用すること。どれも資産形成には欠かせません。
ただし、収入を増やそうとして無理をし過ぎれば身体を壊すかもしれませんし、節約し過ぎれば生活の楽しみが減ってしまうかもしれません。高いリターンを追い求めれば、大きなリスクを抱えることにもなりかねませんし、詐欺に引っかかることすらあるかもしれません。
大切なのは、どれか一つを極端に頑張ることではなく、3つのバランスを取ることです。将来の安心のために準備を進めながら、今の生活も楽しむ。5年や10年ではなく、20年、30年という長い時間軸で考える。そうした視点を持つことで、自分にとって無理のない投資額や、心地よく暮らせる支出水準が見えてくるはずです。
資産形成の目的は、あくまでも将来への安心と、今の充実した暮らしの両方を実現するためにあるものだということは忘れないでおきましょう。特に相場が良くて、資産運用がうまくいっている時ほど忘れがちですが、運用成果を追いかけること自体が目的になっていないかを振り返ることも大切です。
時に立ち止まり、長く続けられるペースかを確認してみたり、たまには自分や家族にご褒美をあげたりしてみるのも、長く続けるうえでは必要なことかもしれません。
加集 勇夫
アモーヴァ・アセットマネジメント