クリプトコラム

「分散しているはず」のソラナが、まるごと止まったことがあるわけ

公開日2026年10月01日

世界中に散らばった多数のコンピューターが、ある日そろって黙り込む。送金も売買も、どこにも記録されなくなる。ブロックチェーンのソラナ(Solana)で、実際に何度か起きたことです。ばらばらに散らしてあるはずなのに、なぜ一斉に止まり、そしてどう立て直すのでしょうか。

一台どころか、全部が止まった

ソラナを動かしているのは、「バリデーター」と呼ばれる世界中のコンピューターです。持ち主も置き場所もばらばらの機械が、同じ台帳を手分けして記録していく。どれかが壊れても、残りでまわるはずの造りです。

ところが2020年に稼働を始めてからの数年間で、ソラナはネットワーク全体の停止を何度か経験しました。一部が遅くなったのではありません。新しい取引がどこにも記録されなくなる、文字どおりの全停止です。とはいえ、止まっているあいだも、それまでの記録や残高が消えるわけではありません。動きだけが止まる、時計の針が止まったような状態です。

きっかけはさまざまでした。人気トークンの発売に注文が殺到して処理があふれた場合もあれば、ソフトウェアの不具合が引き金になった場合もあります。このうち、ソフトの不具合で止まったときには、共通する事情がひとつ横たわっていました。

数が多いことと、種類が多いことは、別の話

バリデーターを動かすソフトは「クライアント」と呼ばれます。そしてソラナのクライアントは、長いあいだ実質的に同じ系統のソフトに大きく依存していました。

機械がいくら数多く散らばっていても、全員が同じソフトを走らせている。そこに不具合が潜んでいれば、それは全員の不具合です。世界中のパソコンが同じOSだったら、ひとつの欠陥で世界中が同時につまずきかねないのと同じ理屈で、数の多さは種類の少なさを埋めてくれません。

つけくわえると、ソラナのバリデーターは家庭のパソコンで気軽に営めるものでもありません。データセンター級の機材と相応の元手(資金)が要るため、担い手の数もおのずと絞られます。それでも運営者は世界中に相当数散らばっていて、「ごく少数が握っている」という話とも違います。

復旧は、申し合わせから始まる

止まったネットワークは、放っておいても二度と動き出しません。では、誰が起こすのか。答えは、人です。

ソラナでは停止のたびに、バリデーターの運営者たちが連絡を取り合い、どの時点から再開するかを申し合わせ、ネットワークの大半が戻ったのを確かめてから、いっせいに立ち上げ直してきました。

誰にも止められないことを理想に掲げるビットコインの流儀からすれば、意外な光景です。ただ、これは欠陥というより設計思想の違いです。ビットコインが何より止まらないことを重んじるのに対し、ソラナは速さと実用を取り、いざとなれば人が協調して立て直す。優先するものが違う、それだけです。

二つ目のソフトという保険

同じ転び方を避ける定石は、ソフトの種類を増やすことです。ソラナでも、まったく別の設計でゼロから作られた二つ目のソフト「Firedancer(ファイアダンサー)」が育ち、2025年ごろからメインネットへの導入が進み始めました(開発は、オンチェーン大手のジャンプ・クリプト(Jump Crypto))。

作りが違えば、同じ不具合で全員が同時に倒れる筋書きは成立しにくくなります。転んでも、全員では転ばないための保険です。度重なる停止を経て運用やソフトウェアの改善も進められてきました。もっとも普及はなお途中で、これで停止が二度と起きなくなると決まったわけでもありません。

「分散」は、ひとつの問いではない

こうして眺めると、「分散しているか」は台数だけで決まる話ではなさそうです。同じソフトなら、機械がいくら多くても弱点はひとつ。倒れ方がそろわないか、立て直しを少数の相談に頼りすぎないか。

分散化とは、何台あるかだけでなく、どれほど同じ弱点を共有していないかという問いでもあります。台数の多さは、その答えの一部にすぎません。