アフリカでは、データ通信なしのガラケー(携帯電話端末)で、ビットコインを送っている人たちがいる
データ通信なしのガラケーで、ビットコインを送っている人たちがいます。専用のアプリも、データ通信も使っていません。押しているのは、短い数字の列だけです。アプリもネットもないのに、そのお金は何を経由して相手に届くのでしょうか。
番号を押すだけで、送金が完結する
国ごとに決まった短い番号を押して発信すると、文字だけのメニューが返ってきます。初めて押したときには、その電話番号にひも付いた財布が自動でできあがります。アフリカでは、通話料の残高確認や、携帯電話を使った送金にも、この画面が使われています。
このサービスの名は、マチャンクラ(Machankura)と言います。使っているのは、この短い番号のメニュー(USSD)という、携帯電話にもともと備わっている仕組みです。マチャンクラは、その同じ入口をビットコインの送受金につないでいます。あとはメニューをたどるだけで、送金も受け取りも完了です。
ふつうビットコインを送るには、スマホにウォレットのアプリを入れ、インターネットにつないで操作します。手元の携帯がしているのは、番号を押すことだけです。
ネットにつながっていないのに、どこへ届くのか。そう思うかもしれません。答えは、インターネットではなく、携帯電話会社の通信網です。利用者の携帯はインターネットにつながないまま、押した番号や選んだメニューの内容を、この回線を通じてマチャンクラのサーバーへ届けています。電話番号にひも付いた財布の鍵を持ち、それを管理しているのは、マチャンクラです。
扱う送金は少額のものが中心で、マチャンクラはそれを、ビットコインを素早く、手数料を抑えて送りやすい仕組み「ライトニングネットワーク」につないで処理しています。スマホが当たり前の時代に、なぜこの古い入口を選んだのでしょうか。
作り手が引っかかったのは、スマホとネットという前提でした
作ったのは、南アフリカのソフトウェアエンジニアで、アマゾン系列のAWSにいたンガコ(Kgothatso Ngako)という人物です。ビットコインを使うには、通常スマートフォンとネット接続が必要です。いまも数百万人がフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)を使うアフリカでは、その人たちが入口に立てませんでした。ンガコはこの壁を取り除くため、2022年にマチャンクラを創業しました。
「インターネットにつながる端末を誰もが持っているわけではない地域で、ビットコインをもっと手の届くものにするために始めた」。ンガコは、創業の動機をそう語っています。
これで、端末を買い替えなくても、ビットコインへの入口は開きました。
その前提の外に、アフリカの約9億人がいる
アフリカでは、2024年時点でおよそ約8億6,000万人がインターネットにつながっていません。新しい端末を買わなくても、いま手元にある携帯電話で使えることが、マチャンクラの目的。
実際、南アフリカやケニアなど、複数の国でこのサービスが使われています。ただし、この手軽さには、引き換えがあります。
鍵の管理は、いまはマチャンクラに預ける形です
ビットコインは本来、その「鍵」(秘密鍵)を持つ本人だけが動かせるお金です。いまのマチャンクラは、その鍵を利用者本人ではなくマチャンクラ自身が預かって管理する仕組み(カストディアル)になっています。誰の手も借りずに管理できることが、ビットコインの特長として語られますが、ここではその管理をあえて明け渡しています。
朝に野菜の代金をビットコインで受け取った店主の残高の価値が、夕方には大きく下落していることもあります。利用者は、こうして値の動くビットコインそのものを、マチャンクラに預けています。
いまでは、そのガラケーの画面から、ビットコインが実際に動いています。ンガコは、その仕組みを作った人です。
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