- 2025年7月29日
vol.62 いま、日本の株式市場への投資に価値はあるのか
日本株、いよいよ最高値を更新するか
NASDAQ100やS&P500など米国株が最高値を更新する中、若干ぼんやりしているように見えた日経平均は、関税問題が一段落したことを受けて、一気に4万円台を回復しました。これは短期的に不透明感の低下とみなされ最高値更新のパワーとなりそうです。しかし、そこで終わっては日本株を買う理由にはなりません。これから10年以上のタイムスパンで日本において人間が努力して工夫して経済を良くしていくと思うのであれば、日本株に投資することが適切でしょう。
これから数か月での日本株と他市場との勝ち負けを競うのは投資というよりも投機です。長い目でみて日本はある程度の高い確率で価値を生み出しそうだと考えて信じて投資をする必要があります。
日本株が最高値を更新するということは、世界経済が長期的には成長するという環境の支援と、日本独自の問題を解決していく期待が必要です。まず10年単位での投資を考える時には外部環境は成長する経済であるとおいてよいでしょう。例えば人工知能の発展と関連する半導体の生産増加が世界的なトレンドであるとすれば、日本の半導体製造装置など指数に占める比率の大きい産業も同時に成長できるでしょう。
一方で、日本の経済成長の輸出依存度が低下し、国内消費がけん引する人手不足、賃金上昇、消費拡大という好循環が生まれなければ、アベノミクスのころにそうであったように、円安依存の株高という状況から脱却できません。FRBが利下げする時期を探っているということは、円高の可能性が高まっていますので、できるだけ早く消費がリードする経済成長にもっていきたいです。この兆しは十分あります。例えば、リーマン・ショック後初めてと言える継続的な賃金の上昇が多くの人に行きわたりつつあります。いまのところ消費の量的な拡大を妨げているのが食料品などのインフレです。
今後、さまざまな政策発動も含めてインフレは穏やかになると予想しますので、人手不足が続く状態で賃金上昇がインフレ率を追い抜くときに、消費の本格的な拡大が期待できます。関税問題が一段落して、この状況は続きそうです。
金利上昇や円高が予想されるものの、人手不足による賃金上昇と国内設備投資の拡大が続けば、消費の拡大との好循環となり、金利が高くとも売上が上がるので企業は借り入れを増やし、人々は住宅を買おうとするでしょう。こうなってくれば、円高で輸入品価格が下がることは消費の支援となります。これまであまり見たことがない状況で理解が難しいかもしれませんが、日本にはいま大きな希望があります。このように考えると短期的な当たりはずれとしての最高値更新ではなく、経済の成長軌道をイメージすることが大事だと分かります。
もちろんリスクはあります。そもそも賃金上昇でインフレになりやすいので、食料品など身近な商品の価格が上がり続けると消費意欲が盛り上がりません。いったんインフレが落ち着くタイミングが来ることが重要で、政策出動にも期待する必要がありますが政治的な動きが遅い恐れはあります。財政出動が突然示されて英国で2022年に起きたトラス・ショックのような金利急上昇などが住宅投資などに悪影響を与える恐れもあります。しかし、10年単位で日本がいまより悪化するとみるよりも、この機会に内需の成長を成し遂げるとみる方がよさそうに思います。
イノベーションの米国株に対して、人口減の日本株をどうみるか
このところ多くの投資家が米国株に資金を集めすぎているという感触があります。もしそうであれば、できれば投資家が日本の可能性にも気づいて分散してほしいと思います。米国株は世界の成長・イノベーションの中心地ですから、これからも最重要な投資先ではあります。最高値も更新しており、成長への構造的な妨げはそれほど見えていません。米国株投資であれば、FRBが利下げすると当面ドル円が安くなる(円高になる)恐れがありますが、日本株への投資であれば、内需拡大を期待する場合、為替リスクは気にしなくてすみます。輸出依存を想定するとドル安はあまり良くないのですが、それでも米国景気の悪化でドル安になるのではなく、コロナ禍に端を発したインフレから正常化するプロセスでの米国の利下げは、輸出数量を低下させるとは考えにくいですので、日本の輸出関連が円高ドル安で大変な苦境に見舞われるとも想定していません。これからの10年の日本の回復に投資資金を回すのに良いタイミングに思います。
日本株を避ける投資家によくある意見が、人口減少する国の株式を買いたくないというものです。確かに米国は先進国には稀有の人口増加国です。しかし、株式のパフォーマンスは規模とは論理的に関係がありません。人口減であれば企業もうまく小さくなれば良いのです。逆に言えば、人口減で規模の削減に失敗するのは人間の努力と工夫がうまく機能しないという意味になります。海外に進出できるのであれば規模を維持できますが、そうでなければ適切に小さくすることが大事です。そうであれば人口減を日本の企業が努力と工夫で乗り越えるはずだと考えてよいでしょう。
人口減に対応する効率の改善には、人口減に対応する投入資本と人材の削減があります。人口が減るのですからその分売上が減り、雇用が減っても問題ありません。無理に雇用を維持して摩擦を起こすより、自然減で良いのです。例えば食品加工機械のような設備も減らして良くなるでしょう。そうであれば、企業には無駄な現金が余りやすくなってしまいます。このような経済では、企業は株主への分配を増やせばよいのです。分かりやすいのは自社株買いで、資本が余っていれば自社株を買えば、1株当たり利益が増加して株価パフォーマンスを株主に返すことができます。資本の効率を高めるということは、営業資産の自然減に伴い、配当や自社株買いで株主にリターンを返すことです。規模拡大による株価上昇期待よりも株主のリターンの源泉は配当などの分配になっていくでしょう。実際に、欧州株投資では配当のリターンがとても大事です。米国でもマグニフィセント7など成長株を除けば、安定成長・成熟企業について自社株買いが経営戦略として重要な決定になっています。
以前は日本株に少なかった高配当株投資の金融商品が増えています。日本株投資家も成長しないと株ではないといった決めつけから脱却しつつある日本の状況に合った動きと言えるでしょう。
どっしり構える真の投資とは ~神山解説
最近の日本株だけ取り上げても、トランプ政権の関税と交渉、選挙結果と政治の動きなどで市場は右往左往しがちです。分散投資であれば、このような問題が国や地域による影響の違いで相殺されやすくなります。また、そもそも地域や国による経済構造の違いも分散投資で克服しやすくなります。イノベーションが次々生まれる米国、安定成長の欧州、中所得国から脱却を目指すアジア、中所得国を目指すインドなど、世界にはさまざまな投資のテーマがあり、指数の分散だけでもそのようなチャンスを自らの投資成果につなげる機会があります。
また、日本、米国、欧州には、株式市場の中でも政治的テーマである防衛、人工知能に関するソフトウエアや半導体、データセンターを供給する不動産など、実にさまざまな観点から投資対象を見ることができます。このようなテーマの盛り上がりや忘却のサイクルに対して、分散投資はあまり心を奪われる必要がありません。
人間の努力と工夫の成果を長期的に世界全体から獲得しようとすることは、一つの国だけとか一つの企業だけから獲得しようとするより穏やかな成果を期待できることになります。大きなリターンは大きなリスクから来るので、儲けたいという気持ちが強いほどグローバル分散投資の魅力は低下するのですが、対象を狭くするほど賭け事の度合いが高まってしまいます。個別企業の事業のリスクは、多くの銘柄が関わるほど相殺されるからで、絞り込むほど市場の好みの揺れなど経済成長の本質とは異なることでリスクを生じさせます。どっしり構える真の投資のために、米国だけ、日本だけではなく幅広い投資を忘れないようにすべきです。
この記事に関連する日興アセットのETF
<日本の高配当株に投資ができるETF>
399A - 上場インデックスファンド日経平均高配当株50 (愛称:上場日経高配当50)1399 - 上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ (愛称:上場高配当低ボラティリティ)
1698 - 上場インデックスファンド日本高配当(東証配当フォーカス100) (愛称:上場高配当)
<グローバル株式に分散投資ができるETF>
1554 - 上場インデックスファンド世界株式(MSCI ACWI)除く日本(愛称:上場MSCI世界株)1680 - 上場インデックスファンド海外先進国株式(MSCI-KOKUSAI)(愛称:上場MSCIコクサイ株)
1681 - 上場インデックスファンド海外新興国株式(MSCIエマージング)(愛称:上場MSCIエマージング株)

<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)
チーフ・ストラテジスト。市場環境に応じて、投資の考え方や市場の見方をわかりやすく伝えるレポートや動画、コメントなどをタイムリーに発信している。1985年、日興證券(現SMBC日興証券)入社。日興ヨーロッパ(当時)を経て、1999年に日興アセットマネジメント(現アモーヴァ・アセットマネジメント)で運用技術開発部長・投資戦略部長に就任。以後、大手証券会社・投資銀行でチーフ・ストラテジストなどを歴任。2015年より現職。
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