- 2025年10月22日
vol.65 高市トレードと日本株市場のゆくえ
日本株の強さは、「シン・高市トレード」に引き継がれる
2025年10月まで(執筆時点)の日本株の上昇は大変顕著になっています。特に高市氏が自民党総裁となって以来の上昇(いわゆる高市トレード)が目立ちます。しかし、2024年中におおむね4万円前後で横ばいだった日経平均が25年4月のトランプ政権の関税ショックを除いても5万円が見えるほどに上昇した理由は、まず人工知能(AI)と半導体関連のけん引がありました。日経平均には日本が得意な半導体製造装置やテスター関連の企業があり、世界的なAI関連企業の成長に乗り遅れることはありませんでした。
加えて、米国経済が好調であったこともポイントです。4月からのトランプ関税は米国の消費者にとっても痛いはず(輸入品の価格が上がる)なのですが、中国からの輸入が近年減っていたことなどから、日本などへの15%の関税であれば、あまり消費を壊すことにならなさそうです。また、数年前からくすぶっている米国のクレジット・リスク(特にプライベート・デットのような投資策の状況が分かりにくい投資商品)が思いのほか問題が少ないことも市場心理を良くしています。日本株からみれば、自動車など輸出が重要な産業で、トランプ関税のショックについて一時的であるとみており、安心感につながっています。
そして、高市氏の政策期待です。高値更新の買い手は海外のマクロ経済の動きに注目して先物取引を売買するヘッジファンドが大きかったように思います。彼らの考えは、基本的に昨年の総裁選での高市氏のアベノミクスの後継といった発言に依拠しています。つまり、いま金利を上げるのは間違い、財政拡大に積極的、といったことです。
しかし、今年の日本経済は前回の総裁選の時とはまったく異なると考えています。インフレは厳しいのですが、賃金上昇や設備投資の拡大が続いています。ここで日銀の政策金利引き上げを邪魔すれば、不必要な円安とそれに伴う輸入品の物価高がインフレ率を底上げしかねません。また今回の総裁選では比較的言葉数が少なかった高市氏は、責任ある財政拡大といった言い方で、赤字国債に頼る景気拡大策だけを志向してはいないことを示唆しています。つまり、市場(特にマクロヘッジファンド)の見方とは異なる政治的な動きが出る可能性があります。
まず、組閣において片山さつき氏を財務大臣に指名しました。片山氏は財政拡大的とは見られておらず、「責任ある財政」の志向と見られます。副総裁の麻生氏や鈴木幹事長も同様に見られています。高市氏は税制調査会長を変更し、税制変更への強い興味を示しましたが、必ずしも財源のない政策による赤字拡大を目指すとは思えません。例えば日本維新の会と同意した税制改革の中から、企業への補助金を減らして消費者の喜ぶ政策を打つ、特措法見直しでも企業分を減らして消費者分を減税で強化するなど、赤字国債による財政拡大でなくても、政治が消費者の方を向いていることを示すことができます。臨時国会で目先の補正予算が組まれるための政策セットが出そろってくれば、高市トレードも一巡するかもしれません。
株式市場からみた高市トレードは、財政拡大期待と政策に関わるセクターや銘柄の評価改善にありますが、そこには低金利継続で銀行が儲かりにくい、不動産は負債コストが低くて儲かりやすいといったストーリーを含んでおり、仮に金利上昇の容認や税制改革と責任ある財政政策となるのであれば、いまの高市トレードは、新しくかつ真の「シン・高市トレード」に変質するとみています。これは、消費がけん引し経済が成長する、内需企業中心の株高となるでしょう。
日本国債やJリートはどうなる?
高市トレードでの債券市場の反応は、超長期国債の金利上昇でした。つまり、市場の予想は高市氏の少々無責任な財政拡大を織り込もうとしていました。つまり、超長期では財政が放漫になり、日本の格下げなどが予想され、利回りがクレジットへの不信から高くなるという動きでした。これは金利上昇でも円高につながらないし、政策金利を低くとどめても長期金利が上昇してしまう信用悪化シナリオです。しかし、仮に高市氏の政策が税制改革を含むとしても財政拡大が限定的であれば、このような信用悪化シナリオの相場は続かないことになります。
シン・高市トレードでは、金利は緩やかな上昇基調となるでしょう。12月以降の日銀の政策金利引き上げが過度にならない限り、高市政権は日銀をけん制しないとみています。政策金利と長期金利の上昇でも、インフレで税収増と責任ある財政政策の期待から、長期金利上昇でも政府破綻リスクは高まらないとみています。
不動産市場は、内需拡大、人手不足による賃金上昇の継続、インフレの政策による落ち着きで引き続き拡大するとみています。特にリート(不動産投資信託)の観点からは、まず賃金上昇による国内消費者の住宅需要の拡大、さらにオフィスの空室率の低下、家賃の引き上げが進みやすくなるでしょう。金利上昇がコスト負担になるとしても、家賃の上昇でカバーされます。またデータセンターの拡大など、新しいセクターのリートの増加で投資対象の分散が進めやすくなることにも注目しています。
日経平均5万円時代が来るか ~神山解説
日経平均が上昇して「こんなに高いと怖い」「高くて買って損をしないのか」といった質問が投資家から増えています。しかし、この質問は日経平均がバブル後高値を抜いたときにも、半導体関連が指数をけん引したときにも、いつでもどこででも聞かれるのです。つまり、過去と比較しての現在の水準にあまり意味はありません。5万円だから高いのではなく、仮に間違った政策期待であれば結果として高かったことになる、ということなのです。
アベノミクス以降、企業収益環境は基本的に良くなってきましたが、日本が本当に良くなり始めたのは、実はコロナ禍後です。まだ行動制限が続いていた頃から、欧米の行動制限廃止などを通じてまず輸出数量がリーマン・ショック前の水準を超えるようになりました。この数量の拡大が日本企業の売上増、人手不足、賃金上昇、最新設備への投資拡大につながります。これ以前の経済状況を病気が治っていたのに立ち上がらなかった「クララ」が立ち上がったと表現しました。そして、いま消費が拡大することで筋肉が回復したクララは歩き出すことになります。高市政権がこの段階で消費者をうまく後押しするインフレ対策などの政策に注力してくれれば、クララは自分で歩けるようになるでしょう。つまり、自国の消費で成長する経済に正常化することができます。この可能性が、いまほど高まったことはありませんでした。5万円という株価水準の裏にある神山流の説明です。
この記事に関連するアモーヴァ・アセットのETF
<日本株に投資ができるETF>
213A - 上場インデックスファンド日経半導体株 (愛称:上場日経半導体)1308 - 上場インデックスファンドTOPIX (愛称:上場TOPIX)
1330 - 上場インデックスファンド225 (愛称:上場225)
<Jリートに投資ができるETF>
1345 - 上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型 (愛称:上場Jリート)2552 - 上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型(ミニ) (愛称:上場Jリート(ミニ))
2566 - 上場インデックスファンド日経ESGリート(愛称:上場ESGリート)

<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)
チーフ・ストラテジスト。市場環境に応じて、投資の考え方や市場の見方をわかりやすく伝えるレポートや動画、コメントなどをタイムリーに発信している。1985年、日興證券(現SMBC日興証券)入社。日興ヨーロッパ(当時)を経て、1999年に日興アセットマネジメント(現アモーヴァ・アセットマネジメント)で運用技術開発部長・投資戦略部長に就任。以後、大手証券会社・投資銀行でチーフ・ストラテジストなどを歴任。2015年より現職。
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