あらゆるものが相互接続された世界
メタバースとは、一般にデジタル上の仮想空間や関連サービスなどを指しますが、本来はデジタルやリアルを問わず、あらゆるものが相互接続された世界を表します。メタバースはコロナ禍の際に大きな関心を集めた後、2022年をピークに注目度が低下したと言われます。しかし、実際には一部のサービスが淘汰された一方で、生活や産業に革新をもたらすプラットフォームとして徐々に進化・定着しつつあります。そして、足元では新たな成長への期待が高まりつつあります。

複数の技術革新がメタバースに進化をもたらす
メタバースを支える中核技術として、まずはVR(仮想現実)/AR(拡張現実)が挙げられます。近年、関連デバイスの進化は目覚ましく、軽量化・高解像度化が進んだことで、没入体験の質が飛躍的に向上しています。さらに、触覚を再現するハプティクス技術や匂いを再現する嗅覚デバイスなどの研究も実用化に向かっており、「五感VR」の登場も期待されています。

AI(人工知能)もメタバースの構築に不可欠です。自律型キャラクターの知能化や自動翻訳、ユーザー行動データの分析などその役割は多岐にわたり、AIの発展はユーザー体験をより自然でパーソナライズされたものへと進化させています。また、生成AIの登場で仮想空間内のオブジェクト作成やゲームのシナリオ生成も容易になり、メタバースの開発効率も飛躍的に向上しています。

さらには、大容量・低遅延の高速通信ネットワーク、5Gの普及によってメタバースの多数同時接続が支えられているほか、ブロックチェーン技術の進化はメタバース内での安全なデジタル資産の取引や所有権の確立を可能にしています。

このように、様々な技術革新が融合することでメタバースの進化が加速しています。そして世界のテクノロジー企業による大規模な投資の継続や、スタートアップ企業の新規参入などにより、これらのイノベーションは今後も促進される見込みです。

大きく拡がるビジネス活用
かつてはエンターテインメント分野での活用が目立ったメタバースですが、近年はビジネスでも様々な応用が進んでいます(左下表)。これらは単なる「リアルの代替品」ではなく、仮想空間であることのメリットを活かし、コストやリスク、物理的な制約を乗り越える有効な手段の一つとされています。このように、今やメタバースは社会インフラの一部へと進化しつつあります。

世界的な成長可能性が高い分野の一つ
世界中で活用が進むメタバースですが、日本ではデジタル技術への対応の遅れなどからメタバースに対する意識が低く、活用事例や知名度は諸外国に大きく後れを取っています。それでも独自の強みを活かした事例は現在も複数進行しており、国内市場規模は2028年に1.8兆円を超えるとの試算もあります。一方でグローバル市場は2030年に1兆米ドルを超えた後、わずか2年で倍増するとの予測もあり(右下グラフ)、世界規模での将来性が高い分野であると考えられます。こうした勢いに乗り遅れないよう、新たな視点で今後のメタバースに注目してみてはいかがでしょうか。

【図表】[左図]メタバースのビジネスへの応用例、[右図]世界のメタバース市場規模 (2022年~2032年予想)
  • 各種報道など信頼できると判断した情報をもとにアモーヴァ・アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび予想であり、将来の運用成果等を約束するものではありません。