高い経済成長が予測されているインド
世界経済において、インドは群を抜く成長を続けています。2025年7月にIMF(国際通貨基金)が発表した世界経済見通しによると、インドの実質GDPは2026年にかけて6%台の成長が続くと見込まれており、米国の2%前後、中国の4%台などと比較しても高い水準となっています。近年、世界全体の成長率が鈍化傾向にありますが、インドは「世界経済の成長エンジン」として、引き続き期待されています。
経済成長を支える人口動態と内需
インド経済の高成長を支えているのは、構造的に有利な人口動態と旺盛な内需です。2021年に中国を抜き、世界一の人口大国となったインドでは、年齢中央値が約28歳と若く、人口ボーナス期(生産年齢人口(15~64歳)が、それ以外の人口の2倍以上にある状態)が2050年頃まで続くと見込まれており、若者を中心に労働力が豊富です。また、インドでは都市化の進展と中間所得層の急拡大により、耐久消費財やサービスへの需要が増加しています。このことは、個人消費を中心とした内需主導のインド経済の成長につながっています。
懸念される米国関税政策の影響
一方、足元では米トランプ政権による関税政策がインド経済に与える影響が懸念されています。米国はインドに対し、25%の相互関税を課していることに加え、8月には、インドがロシアから石油を購入していることを理由に、インドからの輸入製品に対しさらに25%の追加関税を課しました。このことはインドの輸出産業に大きな打撃を与える可能性があります。
ただし、世界中で生産面などにおける中国への過度な集中リスクが意識される中、その依存度を減らし他の国・地域にも投資する「チャイナ・プラス・ワン」の動きが広がっていることは、インドの追い風となっています。特に、米中対立や人件費の高騰など、中国を取り巻く環境が厳しさを増す中で、インドはスマートフォンなどのハイテク分野を中心に、中国に代わる新たな製造拠点の選択肢として注目を集めています。
成長を後押しする減税政策と、国際地位の高まり
金融面でも明るい兆しがみられます。8月には、大手格付会社が、インドの長期ソブリン債の格付けを約18年ぶりに引き上げました(BBB-→BBB)。高い経済成長のほか、財政健全化の取り組みが評価されたことが背景にあり、これによって海外からの直接投資や、証券投資の拡大が期待されます。
さらに、9月22日、インド政府は、「次世代GST(物品サービス税)改革」を施行し、日本の消費税に当たるGSTの大幅引き下げ・簡素化を実施しました。インドではGDPの約6割を個人消費が占めているため、幅広い品目の税率を引き下げた同改革は、消費を促し、景気を浮揚させると予想されるほか、米関税政策の影響を緩和させる効果も期待されます。
2024年のインドの名目GDPは、日本に次ぐ世界第5位ですが、早ければ2025年には日本を抜いて第4位になるとみられており、2028年にはさらにドイツを抜き第3位になるとも予測されています。また、世界の株式市場においてもインドの存在感は高まっています。世界経済の中で確固たる地位を築きつつあるインドの動向からは、今後も目が離せません。
![【図表】[左図]実質GDP成長率(2024~2026年予測)、[右図]株価指数の推移(2020年9月30日~2025年9月30日)](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-2132.jpg)
- 信頼できると判断した情報をもとにアモーヴァ・アセットマネジメントが作成
- 上記は過去のものおよび予測であり、将来の運用成果等を約束するものではありません。