25年は0.2ポイントの上方修正、26年は据え置き
IMF(国際通貨基金)は10月14日に発表した最新の世界経済見通しで、米国と主要国・地域との通商交渉の進展により、米関税引き上げに伴なう影響が従来の想定を下回るとして、今年のGDP成長率を0.2ポイント上方修正しました。ただし、米国の関税が依然として高いほか、米・中などの貿易摩擦が続く中、これまでの通商交渉の結果が持続的な効力を持つか懸念が残ることなどから、26年の成長率を据え置きました。そうした結果、両年とも、24年実績や、コロナ禍前の2000~19年の平均の+3.7%を下回る状況に変わりありません。
25年については、日・欧・米は揃って上方修正
25年の上方修正については、先進国では日本が0.4ポイントと、大きくなりました。その主な背景は、米追加関税の回避に向け、今年上期に輸出を前倒しした効果や、賃金上昇を背景とした個人消費の伸びです。また、26年についても、外需の鈍化などから成長率は鈍化する見通しながら、0.1ポイントの上方修正となりました。
ユーロ圏については、ドイツなどでの財政支出の拡大等を背景に、25年は0.2ポイントの上方修正となりました。また、米国については、関税率が従来想定を下回ることや、減税・歳出法の成立、金融緩和、AI(人工知能)関連の投資の大幅増加などに伴ない、25年、26年とも0.1ポイントの上方修正となりました。
新興国では、関税率が想定より下がった中南米の上方修正が0.2ポイントと、比較的大きくなりました。なお、中国については、米国との通商交渉が完全合意に至らず、不透明感が残る一方で、景気支援に向けた財政出動などを踏まえ、見通しは据え置きとなりました。
リスクは依然として下振れ方向
IMFは、見通しの主なリスクとして、貿易摩擦が再燃し、関税が引き上げられ、それが供給網の混乱と相まって、来年の生産を押し下げる可能性を挙げています。
また、AI分野で投資ブームが起きていることについて、楽観的な見方が投資を過熱させ、株価を押し上げ、消費を後押しすると指摘する一方、AIが過度の期待に応えられない場合には、株価下落などを通じて悪影響が拡散する可能性にも言及しています。
さらに、不動産バブルが弾けて4年が経過したものの、不動産部門が依然、不安定な中国について、成長を支えている製造業の輸出の持続性を見通すことは難しいとしています。また、大規模な補助金で、電気自動車や太陽光パネルなどの戦略的部門への投資を促す方向転換を図ったものの、資源配分のゆがみや経済全体の生産性の低迷につながる可能性を指摘しています。
加えて、多くの国で財政負担が高まっていることや、そうした状況下で、中央銀行に対して金融緩和を求める政治的な圧力が強まり易いことに懸念を示しています。
![【図表】[左図]IMFの世界経済見通し(実質GDP成長率)、[右図]世界の実質GDP成長率の推移](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-2133.jpg)
- 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。