植田総裁の会見を経て、為替は円安に
日本銀行(日銀)は10月29・30日に開催した金融政策決定会合で、政策金利(無担保コール翌日物金利の誘導目標)を0.5%程度で据え置くことを決定しました。据え置きは6会合連続で、市場予想通りの決定でした。ただし、前回7月の会合に続き、今回も2名の政策委員が利上げを求め、据え置きに反対しました。

植田日銀総裁は会見で、利上げを見送った理由について、海外経済などを巡る不確実性が高い中、もう少しデータを見たいと説明しました。今後については、経済・物価情勢の改善に応じて政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整するとして、従来の路線を再確認しました。ただし、同会見で利上げを急いでいない姿勢が示されたとして、円相場は下落し、11月4日午後にかけて概ね1米ドル=154円台で推移しました。

利上げの判断に際し、春闘の初動の姿などを注視
今回の展望レポートでは、25年度の実質GDP見通しが0.1ポイント上方修正されただけで、経済成長率、消費者物価(除く生鮮食品)とも、見通しに大きな修正はありませんでした。ただし、各国の通商政策などの影響を受け、海外の経済・物価動向を巡る不確実性はなお高い状況が続いているとして、十分注視する必要があると記されました。

植田総裁は会見で、米関税政策の影響に伴なう不確実性について、関税の効果が後ずれしているとして、2026年にかけてマイナスの影響がこれまで以上に大きくなる可能性に言及した一方、下振れリスクはやや低下したとの見解を示しました。また、国内の物価上昇について、食料品価格上昇の影響が減衰する一方、基調的な物価上昇率が緩やかに上昇するという見通しに沿って推移しているとして、2%の物価安定目標実現の確度が少しずつ高まってきていると述べました。

なお、今後の利上げにとって大事な判断材料として、同総裁は来年の春闘の初動の姿を挙げ、企業の積極的な賃上げが途切れないかどうか、企業収益の見通しのほか、春闘に向けた労使の対応方針に関するヒアリング情報なども含め、確認していく意向を示しました。

市場が織り込む1月までの利上げ確率は80%台
金融市場が織り込む利上げの可能性は、11月4日時点で、次回12月会合で40%台後半、来年1月の会合で30%台後半となっています。

【図表】[上図]来年までの金融政策決定会合の予定(下段:主な意見の公表日)、[下図]25年10月の展望レポートの見通し(中央値)
【図表】[左図]金利と円相場の推移(2019年1月4日~2025年10月31日)、[中央図]物価上昇率(前年比)の推移(2019年1月~2025年9月)、[右図]賃金(前年比)と消費の推移(2019年1月~2025年8月)
  • 日銀や総務省などの信頼できると判断したデータをもとにアモーヴァ・アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび見通しであり、将来を約束するものではありません。