金(現物)価格は10月中旬に史上初めて1トロイオンス=4,200米ドル台に到達後、4,000米ドル付近まで反落しました。こうした中、本稿では、世銀(世界銀行)が10月下旬に公表した最新の商品価格見通しに基づき、金相場の動向や展望についてご紹介します。

直近で利益確定も、投資需要は前年と比べ急増
最近の金相場の動向について世銀は、利益確定の売りなどが足元の調整要因になったものの、地政学的緊張や経済の不確実性の高まり、米利下げなどが相場を支えてきたとの認識を示しました。また、今年上半期の需要動向について、中央銀行の需要が高水準ながら前年同期より減少した一方、ETF(上場投資信託)などの投資需要が急増したと言及しました(図【A】)。

26年にかけての見通しが一段と上方修正された
金価格の見通しについて、世銀は、25年に年平均3,400米ドル、26年には3,575米ドルと予測しました(図【B】)。前回(25年4月)見通しにおける、25年:3,250米ドル、26年:3,200米ドルから、いずれも上方修正した格好です。なお世銀は、今回新たに提示した27年の見通しを、3,375米ドルとしました。

こうした見通しについて世銀は、地政学的緊張や政策の不確実性が高い状況が続く中、中央銀行の金購入継続や米国の追加金融緩和への期待が相場への追い風になるとしました。また、27年にかけて、金価格はETFの需要後退などによりやや低下するとみられるものの、高水準を維持するとの見解を示しました。

直近の価格水準を踏まえると、これら見通しは保守的に思われますが、世銀は見通しの不確実性は大きいものの、金融市場の不安定化やインフレ再燃などで、見通しから上振れする可能性のほうが高いとしました。そのため過去数回がそうであったように、再び見通しが上方修正される余地があると思われます。

金価格高騰が進んだ1979~80年と共通点あり
世銀はこのほか、金価格高騰が進んだ1979~80年と足元で、地政学的緊張やインフレ懸念、米ドル安などの共通点があると分析しました(図【C】)。加えて足元では、当時ほどインフレ懸念は強くなく、エネルギー市場も混乱していないものの、中央銀行の金需要拡大という当時はみられなかった特徴があると指摘しました。こうした歴史的観点も踏まえると、金の堅調相場が状況次第で続いても不思議ではないと考えられます。

【図表】[上図]【A】過去3年間の上半期の金需要、[下左図]【B】金価格の推移と世銀による見通し、[下右図]【C】1979~80年の金価格急騰局面との比較
  • 上記は過去のものおよび見通しであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。