雇用下振れリスクに対応し、2会合連続で利下げ
米FRB(連邦準備制度理事会)は、10月28・29日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、市場予想通り0.25ポイントの利下げを決定し、政策金利(FFレートの誘導目標)を3.75~4.00%としました。利下げは9月に続き、2会合連続で、雇用の下振れリスクに対応したものです。なお、トランプ大統領の指名で9月にFRB理事に就任したミラン氏が今回も、0.5ポイントの利下げを求め、0.25ポイントの利下げに反対したほか、地区連銀総裁1名は金利据え置きを主張して、反対票を投じました。また、保有資産の削減、いわゆる、QT(量的引き締め)に関して、国債保有額の縮小を12月1日に終了することも決定しました。なお、MBS(住宅ローン担保証券)の保有額縮小は継続されます。

FOMCの声明文では、政府機関閉鎖の影響で、9月の雇用統計がいまだに発表されていないことから、書きぶりに手が加えられました。それでも、評価や見通しに大きな変化はなく、インフレはやや高い水準で推移、雇用の伸びは鈍化、失業率は上昇したものの低位、経済見通しの不確実性は依然、高水準とされました。

ただし、パウエルFRB議長は会見で、次回12月の会合での対応を巡り、利下げを進めるべきとする参加者がいる一方で、慎重姿勢を維持し、少なくとも1会合、利下げを見送るべきとする参加者もいるとして、見解に大きな相違があることを明かし、同会合での利下げ決定は既定路線でないと述べました。金利先物市場では、同会合での利下げの確率は従来、90%を超えていましたが、議長発言後には70%台を切りました。

データが無ければ、より慎重になることも
今回の声明文では、最近数ヵ月で雇用の下振れリスクが高まったとの判断が示されました。また、インフレについては、パウエル議長が会見で、依然として人々を不安にさせているとして、軽視するのは不適切としました。ただし、インフレ上昇のリスクは4月以降低下しているとの見方を示したほか、米関税政策の影響で、インフレ率が0.2~0.4ポイント上昇する可能性はあるが、それは一時的なはず、と指摘しました。

なお、雇用統計などの発表が延期されている環境下、パウエル議長は、経済について詳細な理解が得られるとは思えず、データが無ければ、より慎重になるべきかもしれないと述べました。今後の政策判断の行方を見通す上で、政府機関の再開時期も注目されます。

【図表】[上
図]来年までのFOMC開催予定(下段:議事要旨の公表日)、[下図]25年9月のFOMC参加者の見通し(中央値)
【図表】[左図]米国の消費者物価上昇率(前年同月比)と金利の推移、[右図]米労働市場の主要指標の推移
  • 米労働統計局、全米経済研究所(NBER)、FRBなどの信頼できると判断したデータをもとにアモーヴァ・アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび見通しであり、将来を約束するものではありません。