政府による半導体・AI分野への重点支援の継続
近年、日本政府は半導体分野への積極的な支援を展開しており、2021年からの4年間に投じられた額は累計で5兆円を超えています。また、2024年11月には、総合経済対策の中で「AI・半導体産業基盤強化フレーム」を策定し、2030年度までの7年間で10兆円超の公的支援を行なうことで10年間で50兆円超の官民投資を誘発し、約160兆円の経済波及効果につなげるという壮大な計画を打ち出しました。これは欧米など各国・地域の巨額支援に対抗し、日本の産業競争力を高める狙いがあり、政府の本気度を示すものと言えます。
補正予算から本予算へ:安定継続支援への転換
これまで半導体関連の巨額支援は、主に補正予算で手当てされてきました。しかし、今年11月末に閣議決定された2025年度補正予算での半導体・AI関連支援額は約3,000億円と、過去の実績や先述の「強化フレーム」で策定された公的支援の規模に比べて限定的な額でした。この背景には、政府が2026年度以降は毎年1兆円規模を当初予算(本予算)で確保し、補正予算頼みから脱却して安定的・継続的に資金支援する方針へ転換したことがあります。自民党の半導体戦略推進議員連盟は「年1兆円程度の恒常的支援」をめざすと明言しており、2025年度補正予算はつなぎ的な措置とする戦略です。これにより、中長期的な支援の予見可能性が高まり、民間投資も呼び込みやすくなると期待されています。
国家プロジェクト、ラピダスへの大型支援が続く
政府支援の象徴的なケースが、最先端半導体を手掛けるラピダスです。2025年度には最大8,025億円の追加支援が決定され、同社への累計支援額は約1兆8,000億円に達することになります。さらに2025年度中に1,000億円規模の政府出資が行なわれる予定であるほか、経済産業省は2026-27年度に約1兆円の政府支援を追加するとしています。このように、政府はラピダスによる最先端半導体の量産を国家プロジェクトとして強力に後押ししており、同社計画の順調な進行によって、日本における先端ロジック半導体製造の復活に期待が高まっています。
科学技術計画と「国家戦略技術」分野の指定
今年10月に就任した高市首相は所信表明演説で「新たな技術立国」を掲げ、前政権の方針を引き継いで科学技術分野への投資強化を打ち出しました。
現在、年度内の閣議決定をめざして第7期(2026-30年度)「科学技術・イノベーション基本計画」の策定が進んでおり、この新計画の柱となるのが、経済安全保障上の観点から特に重要な技術を選定する「国家戦略技術(下表参照)」の創設です。政府はAIや半導体をはじめとする6分野を同技術に指定し、これらを集中的に支援する方針を打ち出しています。指定分野には研究開発予算の優先配分や税制優遇措置が講じられる見通しで、経済産業省はこれら6分野への投資について最大40%の税額控除を可能にする研究開発税制拡充案を示しています。政府が戦略技術分野を明確に示し、官民のリソースを集中投入することで、日本の技術競争力強化と将来的な産業創出に弾みをつける狙いです。
このように、この先、日本の半導体産業には、手厚い政策支援のもとでさらなる投資拡大と成長が期待されています。
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