本稿は2026年1月26日発行の英語レポート「BOJ and yen carry: a duration mismatch」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。

12月に0.25%の利上げを行った日銀は、広く予想されていた通り、1月の会合では政策金利を0.75%に据え置いた。2024年3月にマイナス金利政策を解除して以来、日銀は利上げ幅0.25%、間隔およそ6ヵ月(またはそれ以上)という緩やかなペースで利上げを実施してきている。こうした背景から、インフレやインフレ期待の急加速が見られないなか、政策金利を据え置くことにした同中銀の決定は、段階的な正常化という方針と一貫していると言える。

日銀は金融政策正常化のペースについて現行維持(あるいは加速)を示唆

しかし、日銀の声明には、「中立」と言える政策水準の達成にはまだ道半ばであることを示す要素が含まれている。その1つがタカ派として知られる日銀政策委員会審議委員、高田創氏の反対意見で、これは金融緩和の漸進的引き揚げを継続すべきとの微妙な圧力が日銀内部で続いていることを示している。

日銀が(少なくとも2024年以降見られている慎重なペースで)金融緩和の引き揚げを継続するであろうことを示唆するもう1つの要素は、同中銀の四半期ごとの見通しにおいてインフレ予想が上方修正されたことである。1月に公表された見通しでは、インフレが日銀の目標を上回る期間が10月時点の見通しよりも長くなっている。政策委員会の2026年度・2027年度のコアCPI(消費者物価指数)上昇率予想は、下限値が2%目標をわずかに下回るのみで、2026年度が1.9~2.0%、2027年度が1.9~2.2%となっている。インフレ予想が上方修正された一方で、2026年度の実質経済成長率見通しも(0.7%から1.0%へと)やや上方修正されたが、2027年度の実質経済成長率見通しは(インフレ予想の上方修正を反映して)はやや下方修正されており、依然としてインフレに対する警戒感を示している。

財政リスクを受けて利上げ方向に傾き続ける金融政策バイアス

やはり特筆しておきたい点として、日銀は物価動向を判断するにあたり、「政府の物価高対策の効果」を引き続き一時的な要因と位置付けており、「賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズム」の継続を優先している。

日銀は制度上の慣例として政府の財政措置を支持することも批判することも差し控えるが、同中銀が賃金・物価の上昇傾向を優先し財政による物価上昇圧力について見て見ぬふりをする意向を示唆していること、加えて為替動向の注視を強めていることは、独立した金融政策と見込まれる積極財政との相互作用についての知見を市場にもたらしている。

円安は行き過ぎ:過剰なキャリー・トレードが進行中

重要な点として、日銀は今や為替、特に円安を、経済と物価に対する明確なリスクとして指摘している。これは、為替が言及されながらもそれほど中心的な役割を担っていなかった10月の見通しから大きな転換と言える。

日本政府による積極財政の発表を受けた最近の円・日本国債の下落は、望まれないインフレを招く可能性がある。以下のチャートは、円での資金調達ポジション(円キャリー・トレード)への高い需要がドル円を動かす要因となってきたことを示している。この円キャリー・トレードの急増は、日本円を購買力平価(当社の推定では1ドル=100円程度)からさらに遠ざけただけでなく、ドル対比での相対的実質利回りに基づくより短期的な推定適正価値とも整合しない水準にまで押し上げている。


チャート1:対外円債権とドル円相場(国際決済銀行のデータに基づく)

チャート1

出所:アモーヴァ・アセットマネジメント、Macrobond


チャート2:ドル円の推定適正価値

チャート2

出所:Macrobond、米国財務省、米国労働統計局、日本統計局

タイミング:キャリー・トレードは素早く政策ペースは鈍い

政策の観点から見ると、日銀のインフレ見通しの上方修正、潜在成長率を上回る経済成長の継続、そして実際の経済指標が同中銀の見通しに示された予想と一致する限り利上げを継続するとの断固とした表明は押しなべて、日銀が少なくとも2024年3月の金融政策正常化サイクル開始以降と同じ利上げペースを維持すべきことを裏付けている。ただし注意すべき点として、これまでの正常化のペースは鈍く、最も速い時でも年2回の利上げにとどまっている。このため、キャリー・トレーダーなど動きの速い市場参加者には、円安圧力を維持することで日銀の決意を試し続けられる機会がもたらされている。とはいえ、中期的な示唆としては、日銀がこれまでリスク資産に豊富な投資機会を提供してきた円の流動性を抑制するインセンティブが強まっている。円安の度合いが相対的な実質・名目金利で正当化される水準を超えていることを踏まえると、今後タカ派的なサプライズが発生する可能性も依然大きい。