本稿は2026年5月14日発行の英語レポート「Nikkei’s rally: is it the yen? No, it’s tech sentiment」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。

円相場は、マクロ金融面からエネルギーなどの供給ショックを増幅させる一因となっているが、国内株式市場ではそうした動向が材料視されていない様子である。足元では円が対米ドルで数十年ぶりの円安水準まで下落しているなか、日経平均株価の追い風要因の1つとして円安を挙げる声もある。日経平均株価は、イラン紛争に端を発する地政学面の先行き不透明感が強まっているなかでも上昇して高値を更新する展開が続いている。TOPIXの前年比上昇率が40%を超えるなか、輸出関連銘柄の比重が大きい日経平均株価の上昇率はTOPIXを上回ってきている(チャート1参照)。


チャート1:日経平均株価はTOPIXを上回るペースで上昇

チャート1

出所:信頼できると判断した情報をもとにアモーヴァ・アセットマネジメントが作成

円安による実際の寄与度

本稿執筆時点で米ドル/円は前年比で6%程度上昇しているが、日経平均株価の前年比上昇率は60%を超えており、円安が日経平均株価のパフォーマンスの主要 な原動力になってきたという証拠は乏しい(チャート2参照)。


チャート2:日経平均株価と米ドル/円相場の前年比上昇率の比較

チャート2

出所:信頼できると判断した情報をもとにアモーヴァ・アセットマネジメントが作成

それをさらに裏付けるものとして、日本を代表する輸出企業のいくつかを対象に、為替変動による利益への影響を大まかに分析してみた(表1参照)。円安による営業利益への推定影響度は前年比0.3%から2.8%の範囲にとどまっており、日経平均株価の非常に高い上昇率との差は一目瞭然だ。


表1:為替感応度の推計値(1円の円安進行による影響度)

表1

出所:信頼できると判断した情報をもとにアモーヴァ・アセットマネジメントが作成

設備投資ブームというテーマに共鳴するテクノロジー株

太平洋の向こう側でも同様の乖離がみられている。米国を代表する優良株で構成されるダウ平均株価(DJIA)は前年比で17%上昇しており、かなり好調に推移しているが、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)はテクノロジー分野の設備投資好調を追い風に、ダウ平均株価のパフォーマンスを大幅に上回ってきた。

引き続き圧倒的に優勢なテーマとなっているのが世界的な半導体設備投資ブームであり、それを取り巻く、ますます狭い範囲の銘柄が株価上昇を牽引している。こうした状況下において、円相場は株式市場における主要なドライバーというよりも、押し上げ効果が弱い二次的要因となっている。


チャート3:フィラデルフィア半導体株指数はダウ平均株価をアウトパフォーム

チャート3

出所:信頼できると判断した情報をもとにアモーヴァ・アセットマネジメントが作成

日本に訪れている重要な転機を最大限に捉える

一方、日本はデフレによる経済停滞局面を脱却して新たにリフレ局面を迎えているなか、多くの企業でテクノロジーの普及が進み、切実に求められている生産能力の増強を後押ししていく準備が整いつつある兆しがはっきりとみられている。これには財政政策と金融政策の連携も必要となる。両政策当局への信認はまだ損なわれておらず、引き続き信認の確立に向けた取り組みが進められている。生産性向上に向けた投資が持続していく兆しもある。しかし、これらは極めて重要でありながら効果が現れるのに時間がかかることから、日経平均株価の前年比60%超上昇に大きく寄与した世界的な設備投資ブームの陰に隠れてしまっているかもしれない。日本の株式市場は一時的な乱高下に直面する可能性もあるが、こうした良好な構造的要因の存在によって長期的な上昇基調を維持していくと期待される。


個別銘柄への言及は例示のみを目的としており、当該戦略で運用するポートフォリオでの保有継続を保証するものではなく、また売買を推奨するものでもありません。