本稿は2026年6月18日発行の英語レポート「The Fed’s hawkish hold, risk tolerance and carry trades」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。
6月17日、米FRB(連邦準備制度理事会)は広く予想されていた通り、政策金利を3.5~3.75%のレンジに据え置くと発表した。しかし、政策声明文、最新の経済見通し(Summary of Economic Projections、「SEP」)、ケビン・ウォーシュ新議長の就任声明は、総じてタカ派的と受け止められた。声明から緩和的なバイアスが排除されただけでなく、FOMC(連邦公開市場委員会)による2026年~2027年の政策金利見通しの中央値も上方修正されたからだ。フォワード・ガイダンスの提供に消極的であるウォーシュ議長は自身の見通しの提出を控えたが、これは声明文の簡潔さにも表れていた。
見通しを提出したFOMCメンバー18名のうち、9名が2026年に少なくとも1回の利上げを、6名が2回の利上げを予想しており、SEPは前回のよりもタカ派的な内容となった。一方で、経済成長率と失業率の予想については、依然堅調な水準ながらもやや弱含みの経済見通しとなった。対照的に、総合およびコアCPI(消費者物価指数)上昇率の予想は、3月のSEPに比べて予測期間全体にわたり大幅に上方修正された。これを受けて、ドルが上昇し米国債2年物が急落するとともに、新興国通貨が下落した。とはいえ、ドル円相場は、市場の注目が再び日米の金利差に集まっていることから、キャリー取引への需要が依然旺盛なことを示している。
ホルムズ海峡情勢が押し上げるリスクオンへの期待
米国とイランのあいだで締結された覚書(MOU)にホルムズ海峡の開放が含まれていると報じられたことを受け、市場は当面の原油リスク・プレミアムを見直している。2国間のこうした進展が前向きな動きであるのは確かだが、問題が完全に解決されたことを示すものではない。同海峡の船舶通行は未だ完全には再開されておらず、60日を期限とする核交渉も未解決のままである。双方にとっての「出口」は見えてきているものの、その状況は依然として脆く、今後数日間は市場ボラティリティが高まる要因となり得る。
一方、市場の陰ではインフレ圧力の高まりが根強く続いている。紛争の緊張緩和が進んだとしても、海峡の再開が遅れたりエネルギー価格の上昇や供給ショックが遅れて物価に転嫁されたりすることで、インフレ期待は高止まりする可能性がある。その結果、海峡が完全に再開放され、通行再開がインフレ抑制に奏功していることがCPIやPCE(個人消費支出)デフレーターといった経済指標によって裏付けられるまでは、インフレ・ショックが解消されたとFRBがみなすとは考えにくい。
ドル円レート:キャリー取引が依然主流だがリスク・リワードの状況は変化しつつある
短期的には、ドルを対円で押し上げているのは引き続き日米間の金利差で、これはFRBの声明を受けて米国の短期金利が急上昇したことに特に顕著に表れている。米国の短期金利の反応とは対照的に、今週初めの日銀の政策決定に対する市場の反応は、日銀が実際に利上げを実施したにもかかわらず鈍かった。しかし、中央銀行がタカ派色を強めていくことは、いずれキャリー取引にとって逆風となる可能性がある。金融環境のタイト化により、レバレッジやリスク選好度が後退する恐れがあるからだ。言うまでもないが、現在の市場が想定しているのはそうしたシナリオではない。
介入リスクがより重要に
ドル高・円安の要因は、もはや原油やペトロダラー(原油決済通貨としてのドル)への需要だけでは説明しづらくなっている。ホルムズ海峡の再開放を含めたMOUが署名されればリスク・プレミアムが低下すると予想されるなか、相対的な金利差に再び注目が集まっている状況は整合性に欠けるように見受けられる。同時に、投機的なポジションが過度に積み上がっており、介入のリスクが高まっている。ブルームバーグが集計しているCFTC(米商品先物取引委員会)のデータによると、レバレッジを用いている投資家の円のネット・ショート(売り)・ポジションは、日本の当局が為替介入を行った2024年7月以来で最も高い水準に達している。キャリー取引が自然に解消されなくても、介入によって急激なポジション解消が引き起こされる可能性がある。
