長期・分散投資を基本とする投資家のみなさまに、今号から「神山流 経済ってなんだ!?」をお届けします。
まずは、経済ニュースの内容を“長期”か“目先”かに区別することから始めてみましょう。
トレンドとサイクルとは
経済は、強いトレンドと行ったり来たりするサイクルの2つの要因で成長していきます。といっても、トレンドは具体的に目には見えないので、行ったり来たりするサイクルに目を奪われやすいです。
一番大事なのはトレンドで、人間の努力と工夫で世界経済が長期的に成長していくことを指しています。人口が増えるから経済成長するとは限らず、人々の努力や工夫で生産性が高まり(一人当たりの稼ぎが増え)、時間をかけて私たちの生活が良くなっていくことが経済の成長トレンドなのです。

- 上図はイメージであり、実際とは異なる場合があります。
どんな「トレンド」があるの?
人々の努力と工夫で成長していく、というトレンドがあると信じるならば、株式への長期・分散投資が自然な選択となります。近年まで、世界的な金融危機に陥った2008年以降の「リーマン・ショックからの回復」が大きなトレンドの例でした。
いまやコロナ禍を乗り越え、米国も日本もおおむねリーマン・ショックから回復し、企業活動が盛んになっています。そして、これからも世界全体を見れば、人間の努力と工夫で生産性が高まり、結果として株式(株価)の1株当たり利益は成長を続けることになると信じて良いでしょう。
世界の産業のロボット化、宇宙旅行など宇宙開発とといったメガトレンドも、強いトレンドといえます。一つ一つが成功するかは不確実ですが、投資家自身がピンとくるトレンドに投資先を絞ることも、自然な選択になるでしょう。このメガトレンドが一巡するのは、目先の株価上昇ではなく、身の回りがロボットに囲まれ、宇宙旅行が日常的になる時でしょうから、まだ先になると思います。
どんなニュースなら「サイクル」?
日々のニュースで見聞きする株価や為替、金利の上下動、GDP成長率の加速・減速などが、サイクルに関わっています。簡単に言えば、1年以下の短期的な上下動がサイクルです。
サイクルは、しばしば人間の行動や心理の行き過ぎが原因で発生します。例えば、サイクルの上の方(山)では、企業の売り上げの増加により設備投資を増やし、さらに売り上げを増やそうとします。その後、設備投資の増やし過ぎで売り上げや利益が伸び悩み、結局人員削減や設備が廃棄されることになり、サイクルは下の方(谷)に向かうことがあります。しかし、時間の経過とともに整理が一巡することで再び回復し、サイクルの上の方に向かうことになるのです。
株式市場で良いニュースで人気が出た会社の株価が上昇し、興味が一巡したら下落するケースも、心理的サイクルの一例です。
投資信託などのプロの運用者は、これらを意識して売買します。しかし、長期・分散投資を基本とする投資家は、上下動する資産別の売買をプロの運用者に任せておいて良いと思うのです。