「神山流」経済の見方では、長期投資の観点から経済のトレンド(長期的な方向性)を見る時、需要を大切にします。米国の“雇用増→小売売上高増→輸入増”は、“米国以外の国・地域の輸出増→世界経済の成長”につながると期待されます。また最近では、第二次トランプ政権が関税政策で国内生産を増やそうしていることの影響にも注目しています。

米国人の買い物は世界からの輸入に依存
米国人の買い物パワー(買い物する力)がなぜ輸入につながるのでしょうか。それは、米国内での製造だけではモノが足りないため、欧州や中国、メキシコ、カナダ、日本などから輸入しているからです。

ちなみに、日本の輸出先として米国に次いで中国も大きいので、“米国は日本の輸出にあまり重要ではないの?”というとそうではありません。例えば、日本から高付加価値の部品や製造用の機械が中国に輸出され、それを使って生産された商品が「Made in China」として米国などに輸出されているからです。

「米中貿易摩擦」はトレンドに影響を与えるの?
今のところ、大きな影響はないとみています。米国のモノの輸入に占める中国の割合は、13%(米商務省、2024年)と大きいのですが、第一次トランプ政権以降、米中貿易摩擦や安全保障上の懸念などから低下傾向にあります。しかし、中国からの輸入が減っても、その他の国からの輸入が増え、全体の輸入額は増加しているのです。また、2025年1月に発足した第二次トランプ政権が、貿易相手国に対して相互関税を課すとの発表をきっかけに、関税引き上げ前の駆け込み輸入が急増し、2025年3月の輸入額は過去最大となりました。

このことから、米国人の買い物が輸入を通じて行われるトレンドは変わっていないといえます。また、コロナ禍対応の財政出動実施後に米国の輸入が増加していることからも、米国の買い物パワーの強さは変わっていないともいえます。

時折、「世界経済への中国の影響が増している」などといわれます。しかし、主要国にとって、中国では最終需要よりも製造用の部品・機械への需要の方が大きいので、高性能で高付加価値の商品への最終需要、つまり米国など先進国の買い物パワーに依存していることに変わりはないのです。

米ドルの動向は気にしなくていいの?
あまり気にしなくても良いでしょう。米国はどちらかといえば輸入国なので、米ドル安→米輸出企業の収益向上→給与上昇・景気好転という関係は弱いです。米国経済が強くなる時は、小売売上高増と米国金利上昇・強い為替が同時に進むことが多く、米ドル高が原因で消費が改善したり悪化したりするという結果になりにくいです。輸出国の日本は、世界経済と米ドルが強い→輸出増→経済成長という順番になるので、為替動向に敏感になりやすいのです。

世界経済の成長を考える時は、米国経済、特に消費動向をみて、次に世界経済への波及を知るために米国輸入をみることになります。2025年に入ってからは、第二次トランプ政権の関税政策の影響で駆け込みで輸入が増えたり、その反動減が起こったりしていますので、その影響に注目しています。

米国輸入額の推移2018年1月~2025年5月
  • (米商務省のデータをもとにアモーヴァ・アセットマネジメントが作成)
  • 上記は過去のものであり、将来を予測するものではありません。