AI・半導体分野の成長期待を背景に、日本でも関連企業の株価が大きく上昇しています。日本の代表的な半導体企業30社の株価で構成される「日経半導体株指数」のパフォーマンスはTOPIXを大きく上回っており、近年の半導体産業の好調が確認できます。では、「半導体ブーム」の恩恵を享受できるのは、こうした中核に位置する一部の企業だけなのでしょうか。
半導体の高性能化を支えるサプライチェーン
まず、今後の半導体産業について考えると、「半導体の高性能化はもはやチップ単体の性能競争にとどまらない」ということが重要なポイントとなります。生成AIやデータセンター向けの高性能半導体には、演算能力だけでなく、高速伝送、大容量化、省電力化など、従来よりも高度な性能が求められます。そのため、半導体の価値は、これまで技術進化の中心だった「前工程」の微細化技術だけでなく、「後工程」での実装技術によって大きく左右されるようになりました。
この点で、日本には大きな優位性があります。半導体は製造工程が1,000を超えるとも言われ、関連産業の裾野が極めて広い領域です。そのため、先端半導体の安定供給には多層的なサプライチェーン(供給網)の構築が不可欠となります。日本には、半導体を製造する企業だけでなく、それらを支える企業が幅広く存在しており、特に後工程に関わる領域において、材料、部品、製造装置、検査、実装などの製品・技術で高い競争力を持つ企業が多く見られます。中には、圧倒的なシェアを誇るニッチトップとして世界で活躍する中堅・中小企業や、一見、半導体とは無関係な業種でも、本業で培った高度な技術を応用し、半導体分野の重要サプライヤーとして活躍する企業など、多彩な「黒子企業」が数多く見られます。
日本政府もサプライチェーンの強靭化を重視
こうした半導体産業の裾野の広さは、半導体ブームの恩恵が幅広い業種や企業群に及び、全体的な成長機会の獲得につながりやすいという強みになります。
日本政府は2023年以降、半導体サプライチェーンの強靭化を経済安全保障上の重要戦略に掲げており、これまで約4,300億円(最大助成額)もの支援を決定しました。また、「AI・半導体産業基盤強化フレーム(2024年)」のもと、2030年度までの7年間で10兆円超の公的支援を行ない、10年間で50兆円超の官民投資を誘発し、約160兆円の経済波及効果をめざすとしています。ここでも重視されるのは最先端半導体の製造能力だけではなく、サプライチェーン全体の強靭化と、幅広い産業の競争力向上です。このように、政策当局が半導体を一業種としてではなく、多様な産業にまたがる「産業基盤」と捉えていることは、注目すべきポイントです。
日本の幅広い産業基盤への恩恵が期待される
半導体ブームの本質は、半導体そのものの需要拡大だけでなく、半導体の高性能化を支える周辺領域にも付加価値の拡大が波及する点にあると言えます。足元では一部のハイテク企業に限られた追い風と捉えられがちですが、中長期的にはその恩恵が幅広い産業基盤に拡がり、日本経済全体の底上げにもつながると期待されます。政府が国策として取り組む半導体分野には、今後も高い注目が集まりそうです。
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