金(スポット)価格は2026年1月下旬、一時1トロイオンス=5,500米ドル台の過去最高値を付け、3月上旬にかけても5,000米ドル前後の高値圏を維持しました。しかし、同月中旬の急落後は概ね軟調に推移しています。

こうした中、本稿では、価格変動を異なる時間幅の動きに分解する多重解像度解析という手法を用い、金相場の動向を読み解きます。

米金利の上昇で拡がる金相場への慎重姿勢
金の値動きを短期(3ヵ月未満)、中期(3ヵ月以上、1年未満)、長期(1年以上)の3つの成分に分解すると、足元では、長期成分は上向きを保つ一方、高値圏で価格を押し上げていた短期・中期成分が、そろってマイナスに寄与していることが分かります(図表【A】)。

3月中旬の急落局面では、中東情勢の緊迫化をきっかけとした米長期金利の上昇や米ドル高に、流動性確保を目的とする換金売りが重なり、短期成分が主導する格好で金価格は下落しました。もっとも、4月上旬には短期成分の寄与がいったんプラスに転じました。このため、3月中旬の下げは、一時的なショックに対する持ち高調整としての性格が強かったとみられます。

ところが、4月下旬以降の軟調局面では中期成分による下押しが相対的に目立つようになってきました。このことから、金相場に対する慎重な姿勢が、短期的な値動きを追う投機筋だけでなく、より幅広い投資家層へ拡がった可能性が考えられます。

その主な要因としては、インフレ圧力の強まりに伴なう米国の利上げ再開観測に加え、5月下旬にFRB(連邦準備制度理事会)議長に就任したウォーシュ氏のインフレ抑制を重視する姿勢などを受けて、米金利が上昇傾向となったことが挙げられます。足元では小幅な利上げの可能性が織り込まれていますが、高金利の長期化に対する警戒が残る間は、神経質な展開が続くおそれがあります。

外貨準備としての構造的な金需要は継続
他方で、近年の金価格上昇を主に支えてきた長期成分は引き続き上昇しています。これは、米国の政府債務の拡大に伴なう米ドルの信認低下や、米ドル建て資産の凍結に代表される制裁リスクなどを背景に進む、外貨準備の米ドルから金への資金移動という構造的需要の堅調さを反映しているとみられます。

こうした見方は、通貨当局への調査の結果とも整合的です。金の国際的な業界団体であるワールドゴールドカウンシルが2026年2月から5月にかけて通貨当局を対象に行なった、向こう5年間の外貨準備構成比率の展望に関する調査では、回答機関の78%が金の構成比率について「やや上昇」、5%が「大幅に上昇」すると回答しました。一方で、米ドルについては、62%が「やや低下」、12%が「大幅に低下」と回答しました(図表【B】)。この結果を踏まえると、外貨準備資産としての金需要は先行きも根強いと期待されます。

以上を総合すると、米国の金融政策や投資家の姿勢の変化には引き続き留意が必要ですが、長い目でみれば金相場に前向きな見方が維持できると思われます。

【図表】[左]【A】金(スポット)価格と時間幅別変動寄与の推移(2023年1月3日~2026年7月22日、日次)、[右図]【B】金と米ドルの外貨準備構成比率の展望
  • ワールドゴールドカウンシルなどの信頼できると判断した情報をもとにアモーヴァ・アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび展望であり、将来の運用成果等を約束するものではありません。