政府支援と先端半導体への再参入
かつて隆盛を誇った日本の半導体産業は、日米半導体摩擦や韓国・台湾勢の台頭、産業構造の転換の遅れなどによって1990年頃から次第に競争力を失い、特に先端半導体の分野で後れを取ってきました。こうした状況を受け、日本政府は2021年に「半導体・デジタル産業戦略」を打ち出して以降、半導体産業の復活に向けた手厚い支援を行なっており、2023年には、「2020年からの10年間で半導体関連の売上高を3倍以上に拡大させる」という意欲的な目標を掲げました。
政府の支援は、日本勢が強みを持つ産業用半導体分野に加え、製造装置・材料を含む半導体サプライチェーンの強靭化など、多岐にわたります。なかでも注目されるのが、日本が出遅れていた先端半導体分野への再参入です。政府の後押しによって誕生した、先端ロジック半導体の国内大型製造基盤であるJASMや、次世代半導体の開発・製造を担うラピダスには、日本の半導体産業を牽引する役割が期待されています。
半導体関連の売上拡大は今後本格化する可能性
近年、国内外で大規模な半導体工場の建設が相次いでいます。そうしたなか、世界的に高い競争力を持つ日本の半導体製造装置の出荷額は堅調に推移し、2014年から2024年の間に約3倍に拡大しています(左下グラフ)。一方で、半導体関連の出荷額の増加率は限定的な水準にとどまっています。
ただし、この点を考える上では、半導体産業特有の投資・設備サイクルを踏まえる必要があります。半導体は製造工程が数百にも及ぶ大規模な精密産業です。そのため、工場やインフラにも特殊な設備や環境が必要とされ、一般的な工場に比べて建設工事の着手から量産・出荷までのリードタイムが長くなる傾向があります。実際に、2021年12月に設立されたJASMは、第1工場での量産が2024年末に開始され、建設中の第2工場は2027年末の稼働が予定されています。また、2022年8月に設立されたラピダスは現在、試作ラインが稼働中で、量産開始は2027年度後半となる見込みです。このように、足元では複数の大型プロジェクトが本格稼働に向けて準備中であることから、半導体関連の売上拡大は、今後加速する可能性が高いと考えられます。
日本経済への波及効果も期待される
近年は日本だけでなく、世界各国の政府がさまざまな政策を通じて半導体産業を後押ししています。そのなかでも日本政府が掲げる目標は高く、これまで他国に遅れていた分、今後の成長率は相対的に高くなることが期待されます。
加えて、半導体産業は投資サイクルの初期段階から成熟期に至るまで、建設、インフラ、製造装置、材料、物流など幅広い業種に影響を及ぼします。そのため、半導体産業の再成長は、日本経済に広く、かつ長期的な波及効果をもたらすと考えられます。日本の半導体産業をとりまく動向には、引き続き注目が集まりそうです。
- 記載の銘柄について、売買を推奨するものでも、将来の価格の上昇または下落を示唆するものでもありません。また、当社ファンドにおける保有・非保有および将来の銘柄の組入れまたは売却を示唆・保証するものでもありません。
- 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。