近年、日本では日本銀行の金融政策の転換や財政動向などを背景に、長期金利が上昇しています。投資の世界では、「金利が上昇すると債券価格は下落する」と説明されますが、なぜ債券価格と金利は逆方向に動くのでしょうか。今回は、その理由を「現在価値」という考え方から見ていきます。
今の100万円と将来の100万円は同じ価値ではない
例えば、今すぐ受け取る100万円と、10年後に受け取る100万円とでは、今すぐ受け取る方が価値が高いと考えられます。これは今受け取れば、そのお金を運用して増やせるためです。それでは、10年後に100万円を受け取るためには、今いくら必要でしょうか。年1%の金利が10年間続く場合には約91万円、年3%の場合は約74万円を元手とすれば、10年後に100万円になります。つまり、他の条件が同じであれば、金利が高いほど、将来の一定の金額に相当する現在の金額は小さくなります。このように将来受け取るお金を、金利をもとに現在時点の価値に換算したものを「現在価値」と呼びます。右下のグラフが示すように、同じ10年後の100万円でも、その現在価値は金利によって異なります。では、この考え方は債券価格とどのように関係しているのでしょうか。
債券は将来お金を受け取る権利
一般的な債券では、保有中に利息を受け取り、満期になると元本を受け取ります。言い換えれば、債券は「将来、利息や元本を受け取る権利」と捉えることができます。
債券の価格は、将来受け取る利息と元本を、それぞれ現在価値に換算して合計したものと考えられます。市場金利が上昇すると、将来受け取る利息や元本の現在価値は小さくなるため、債券価格は下落します。反対に、市場金利が低下すると、現在価値が大きくなるため、債券価格は上昇します。
この関係は、すでに発行されている債券(既発債)と、新たに発行される債券(新発債)を比べることでも理解できます。発行体の信用力や償還期限、流動性など、他の条件が同じであれば、市場金利が上昇すると、より高い利回りで新発債が発行されるため、相対的に利回りの低い既発債は、選ばれにくくなります。その結果、新発債と同等の利回りになるよう、既発債の価格は下落します。反対に、市場金利が低下すると、既発債の利回りの魅力が相対的に高まり、その価格は上昇します。
既発債の価格下落だけでなく、利息にも目を向ける
ただし、金利上昇は債券投資にとって悪いことばかりではありません。短期的には債券価格の下落要因となる一方、投資信託を通じての債券投資の場合、受け取った利息や債券の償還・売却によって得た資金を、より利回りの高い債券に再投資できるようになります。そのため、投資期間が長くなるほど、利息収入や再投資による収益が積み上がり、当初の価格下落の影響を補うことも期待できます。
このように、債券投資では、市場金利の変化に伴なう価格変動だけでなく、利息収入や再投資の効果なども含めた「トータルリターン」の視点で捉えることが大切です。
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