活用の幅を広げながら発展を続けるメタバース
メタバースとは、一般にデジタル上の仮想空間や関連サービスなどを指しますが、本来はデジタルやリアルを問わず、あらゆるものが相互接続された世界を表します。最近では、メタバースという言葉自体を耳にする機会が減ったように感じられますが、一方で、中核となる3D技術やデジタルツインなどは、AIとの融合によって新たな領域へと活用の幅を広げています。

生成AIがメタバースの進化を後押し
従来、メタバースの構築には、3Dモデルや背景などを専用ソフトで制作する技能と、多くの時間が必要でした。しかし、生成AIの登場により、テキストや画像から3Dコンテンツを生成・編集する技術が進展し、作成工程の短縮やコストの低減が期待されています。このように、生成AIは、仮想空間のサービス利用者をサポートしたり、キャラクターとの会話を高度化するだけでなく、仮想空間の制作を支援する技術としても、メタバースの発展を支え始めています。

AIとの融合が進むのは、消費者向けの仮想世界だけではありません。足元では、デジタルツインなどを活用する「産業メタバース」の取り組みが具現化しています。デジタルツインは、製品や建物、工場など現実世界の対象をデジタル空間に再現し、そこで得られたデータを反映しながら分析やシミュレーションを行なう仕組みです。現実世界では試しにくい条件を事前に検証できるため、開発期間の短縮や、コスト、リスクの低減につながる可能性があり、製造、建設、医療、小売など幅広い分野で活用されています。さらにAIを組み合わせることで、多数の条件を効率的に比較したり、デジタルツインから得られるデータを分析して異常予兆の検知や業務プロセスの最適化などに生かすこともできます。デジタルツインは、現実の状態を可視化する仕組みから、将来の変化を予測し、意思決定を支援する基盤として、役割を広げつつあります。

フィジカルAIを支える基盤となるデジタルツイン
デジタルツインの新たな役割として注目されるのが、「フィジカルAI」の学習・検証の場としての活用です。フィジカルAIとは、センサーなどで現実世界を認識し、状況に応じて判断を行ない、ロボットや自動運転車などを自律的に動かすAIです。危険な状況や、まれな異常を現実世界で繰り返し再現することは、安全性やコストの面で容易ではありません。そこで、重力や摩擦、衝突などを再現する仮想環境を使えば、多様な条件でAIの学習と検証を行ない、実機を動かす前に問題点を確認することができます。そして、仮想空間で得た学習成果を現実世界へフィードバックする技術は、フィジカルAIの実用化を支える重要な要素となっています。

このように、メタバースを支える技術は、デジタル空間内での交流や体験にとどまらず、現実世界の設計、運用、意思決定などの支援にも活用されています。その進展は、AI、半導体、クラウド、センサー、ロボティクスなど、関連する幅広い分野に新たな成長機会をもたらす可能性もあります。AIとの融合で進化するメタバースに、改めて注目してみてはいかがでしょうか。

【図表】[左図]世界のメタバースの市場規模、[右図]分野別の企業向け国内メタバース市場規模の推計
  • 総務省「技術動向を踏まえた電波利用に係る課題等に関する経済学的観点を踏まえた調査研究の請負」のデータをもとにアモーヴァ・アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび予想、推計であり、将来の運用成果等を約束するものではありません。