生活水準の向上とともに広がる医療需要
世界最大の人口を抱えるインドでは、経済や社会の変化とともに、求められる医療の在り方も変わりつつあります。同国ではかつて、感染症対策が医療上の重要課題でしたが、近年は、生活水準の向上を背景に糖尿病や心疾患、がんなどの生活習慣病も増加し、継続的な治療や高度な医療サービスへの需要が高まっています。そのため、一人当たり名目GDPとともに、一人当たり医療支出も長期的に増加傾向をたどっています。

政府が後押しする医療制度とデジタル化
拡大する医療需要に対応するため、インド政府は制度の整備を進めています。2018年には、世界最大規模の低所得者層向け公的医療保険制度「アユシュマン・バーラトPM-JAY」を開始し、医療費負担の軽減と医療アクセスの改善を図ってきました。さらに2021年には「アユシュマン・バーラト・デジタル・ミッション(ABDM)」を発表し、国民ごとのデジタル医療IDや医療情報の連携基盤の整備など、医療のデジタル化にも取り組んでいます。公的医療保険が医療費負担の軽減を通じて受診の機会を広げる一方、デジタル基盤の整備は、医療機関をまたいだ継続的な診療や、サービス提供の効率化を支えます。こうした制度面とデジタル面からの取り組みは、医療サービスの利用を広げるとともに、医薬品や医療機器の需要を支える基盤にもなると期待されています。

医薬品と医療機器産業の発展が期待される
インドは従来より「世界の薬局」と呼ばれ、世界有数のジェネリック医薬品供給国として知られてきました。
高い製造能力と価格競争力を強みに、これまで世界各国へ医薬品を供給してきましたが、国内の医療需要が拡大するなか、こうした生産基盤は、国内への安定供給を支える上でも強みになると考えられます。

一方、医療機器分野では輸入依存度の高い状況が続いてきましたが、近年は政府の医療機器振興策などを背景に、国内生産能力の向上が進められています。国内生産を促す政策は、輸入依存度の低下に加え、関連産業の発展や雇用の拡大にもつながる可能性があります。医療需要の拡大と国内生産基盤の強化が相互に作用すれば、医薬品や医療機器にとどまらず、関連するヘルスケア産業の裾野が広がるとみられます。

ヘルスケア市場には大きな成長余地
インドの一人当たり医療支出は増加傾向にあるものの、先進国と比べて低い水準にあります。また、都市部と地方部では受けられる医療サービスに差があり、地域によっては医師や医療施設が不足するなど、医療環境には課題が残されています。市場の拡大には、医療人材や施設の確保に加え、地域間の医療格差の改善が欠かせません。一方、人口規模の大きさや所得水準の向上に加え、公的医療保険の普及やデジタル技術の活用が進めば、これまで十分な医療を受けられなかった人々にもサービスが広がる可能性があります。課題の解消が新たな需要の取り込みにつながる点で、インドのヘルスケア市場には中長期的に大きな成長余地があると考えられます。

【図表】[左図]インドの一人当たりGDPと医療支出の推移、[右図]インドのヘルスケア市場規模推移
  • 信頼できると判断した情報をもとにアモーヴァ・アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。