本稿は2026年3月19日発行の英語レポート「Global Investment Strategy Committee Outlook Q2 2026」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。

当社アモーヴァ・アセットマネジメントのグローバル投資戦略委員会(GISC)が3月11日に開催された。当委員会では、世界の経済成長は鈍化しつつもプラス領域にとどまるとのポジティブな基本シナリオを維持する。一方、イランでの紛争に端を発した原油・物流ショックの進行が不透明感をもたらしており、「高インフレ・低成長」局面への世界的なレジーム・シフトが起こる可能性が現実味を帯びてきている。こうしたなか、リスクの分布は前四半期に比べて裾野が大幅に広がっており、かつ下方に偏っている。

当委員会の主要な結論:

  • 2025年は関税を受けてコスト面のリスクが問題視されたが、2026年序盤はイラン紛争により地政学的緊張の激化が最も大きな懸念材料として浮上した。不透明感が広がるなか、緊張が長期化すれば高インフレ・レジームに移行するリスクが高まる。
  • 当委員会の基本シナリオとしては景気が投資主導で底堅く推移するとの見方を維持しているが、リスクの分布は裾野が広がっており、かつ下方に偏っている。
  • インフレ期待が高まりつつあることから、穏やかな金融緩和環境というよりも名目経済成長率が加速する環境を予想する。
  • 進行中のAI(人工知能)および関連インフラの設備投資ブームは、景気・インフレをめぐるリスクに加えて紛争に伴うエネルギー供給およびインフレのショックの可能性から、緊迫した状況が続く。
  • 日本以外の多くの国で政策金利が中立水準に達しているとしても、長期金利にはあらゆる地域で上昇圧力の兆候が見られている。
  • 日本のファンダメンタルズは賃金の上昇や企業改革が追い風となっているが、交易条件ショックのリスクがあることから当局は難しい政策判断を迫られるだろう。
  • 中国経済の成長鈍化は足元で市場に完全に織り込まれている模様。政府は財政出動の余地を温存しているようだが、消費・不動産市場の主要指標は底打ちの兆しをみせつつある。
  • 地政学的リスクへの反応は、資産クラスによって明確に異なっている。株式市場は引き続き様子見の感が強く最も小幅な反応にとどまる一方、原油とコモディティ、次いで長期金利は前四半期からより大きな反応を見せている。

世界の経済成長:市場のレジーム転換の可能性が高まる

進行中のイラン紛争、そしてそれがエネルギー価格や物流におよぼす影響は、米国をはじめ世界の経済見通しの主要な不透明要因となっている。これまで指摘してきた通り、金融市場、とりわけ株式市場は、イラン紛争関連の動向が経済および企業収益の両成長にもたらす影響について、長引くことはないと引き続き懐疑的にみているようだ。市場はレジーム・シフトが起こらないとの想定で動いており、当委員会でもこれを基本シナリオとし続けている。とはいえ、レジーム・シフトの起こる確率は高まりつつあるとも認識しており、基本シナリオをめぐる不確実性は裾野が広がったと考えている。

また、中東の紛争が長引くリスクもある。こうしたリスクとその市場への影響を見極めるために、当委員会ではエネルギー・ショックの波及ループを追跡する枠組み「レジーム波及ラダー」(レポート「イラン紛争ショック:リスクは市場が想定している以上に根深い可能性」を参照)を構築し、これに照らして事態の進展、具体的には日本経済に対する交易条件ショックの影響を継続的にモニタリングしている。もっとも、今回の四半期アップデートにおいては、レジーム転換のリスクが依然高いことを認識しつつも、基本シナリオとショック長期化のリスクとを分けて考えている。


チャート1:(日本以外では)各国の政策金利は中立水準に近づいている

チャート1

出所:Macrobond


チャート2:先進国国債のイールドカーブはスティープ化

チャート2

出所:米国財務省、日本相互証券、Macrobondの情報をもとにアモーヴァ・アセットマネジメントが作成(データは2026年3月時点)

グローバル債券、金利、クレジット市場:波及経路

グローバル債券市場は、株式市場に比べると、インフレ・リスクのシナリオに対して引き続きかなり高い感応度を示している。中東での紛争の進行に伴い、原油供給や物流の混乱がインフレ期待により持続的な上昇圧力をもたらすのではとの懸念が強まっている。さらに、先進国の債務残高が歴史的な高水準にあることを考えると、イールドカーブは各国市場にわたり、純粋なブル・スティープ二ング(短期金利の低下幅が長期金利の低下幅を上回る形のスティープ化)ではなく長期金利が上昇する形のスティープ化が進みやすくなるだろう。

紛争やそれに伴う原油ショックにより、足元のインフレ指標はもはや判断材料として役に立たなくなっている。また、金融政策の見通しは不透明なままだ。(日本以外では)各国中央銀行による金融緩和期待が残る一方で、ショックが予想以上に長期化した場合は中銀の対応が後手に回ることになるのではないかとの懸念もあり、結果として長期金利は上昇基調が根強く続いている。

例えば、米国の雇用指標の軟化を受けて今後1年以内に米FRB(連邦準備制度理事会)が金融緩和を実施する可能性を市場が織り込み始めたのはつい最近のことだが、こうした期待は紛争をめぐる不透明感の高まりによって揺らいでいる。当委員会では、FRBが年内に利下げを実施できない可能性を認識しているが、基本シナリオとしては1回の利下げを引き続き想定している。

一方、日銀による追加利上げの予想は変わらない。当委員会では、日銀は今後1年で政策金利を本稿執筆時点の0.75%から1.25%近辺まで引き上げ、日本国債の10年物利回りは2%台半ばに向けて着実に上昇するとみている。

米国債と日本国債の長期債利回りの見通しについては、その格差が前四半期に比べて大幅に拡大しており、米国債とドイツ国債の長期物のあいだで見込まれる利回り格差よりもはるかに大きい。ECB(欧州中央銀行)は政策金利が「中立」水準に到達していることから金利を当面据え置くと予想するが、一方でドイツ国債の利回りは2026年末までに10年物で3%を超えるとみている。

当委員会で議論した重要なリスク・シナリオの1つとして、現在プライベート・クレジット市場に悪影響をおよぼしているストレスが波及する可能性がある。現時点では、プライベート市場でストレスが高まっている一方でパブリック市場の信用スプレッドは依然タイトな水準にあり、安心できる状況が続いている。したがって、当委員会の基本シナリオとしては、クレジット市場のストレスは案件固有のものにとどまり(パブリック市場に比べて不透明な部分が多いと言える)プライベート市場の域を出ないと想定している。

とはいえ、進行中の紛争の依然不透明な影響など外的ストレス要因が存在することから、パブリック・クレジット市場への波及の兆候がないか、引き続き注視している。ストレスがプライベート市場からパブリック市場へと波及すれば、現在クレジット市場の低流動性セクターに限定されているリスクがよりシステミックなものになりかねない。さらに強調しておきたい点として、クレジット市場の安定は現在の設備投資の大幅拡大を支えている要因であり、したがって引き続き株式市場の堅調さをサポートする重要な条件となっている。

米国:プラス成長が続く一方で個人消費には不透明感

市場では、米国経済がすぐには減速せず堅調さを維持するとの見方が続いている。金融市場がより正確に予測しているのは局面転換の確率よりもシナリオ別の結果であるかもしれないとの認識から、当委員会では、穏やかな基本シナリオを維持ながら、リスク分布の裾野が広がるとともに下方に偏っているとの見方に立っている。

基本シナリオでは、今後1年の米国のGDP成長率は前年同期比で1%台半ばから2%台半ばのレンジと底堅い推移を示すとみている。しかし、委員会メンバーの予想の分布は著しく広がっている。下位四分位数と上位四分位数のあいだの乖離は拡大し、今後数四半期において成長率が前年同期比で若干のマイナスから1%未満にとどまるシナリオは25%以下の確率で想定している。委員会メンバーの予想の中心傾向としては堅調な名目成長を見込んでいるものの、労働市場への懸念は強まりつつある。コアPCE(個人消費支出)インフレについては、今後1年でFRBの目標である2まで減速するのは難しいだろう。前述の金利・クレジットのセクションで強調した通り、足元の流動性環境は潤沢で、貨幣乗数が順調に機能しAI関連の設備投資に追い風となっている。もしこのような流動性が失われれば、プライベート・デット市場のストレスが他の市場へと波及する恐れがあり、市場に影響をおよぼす主要リスクの1つに数えられるだろう。

米国株式の見通し:当委員会では、企業利益(基本シナリオでは米国企業が2桁台の利益成長を見せるとの想定を維持)のもたらす追い風がマクロ経済への不安を上回ると依然みているが、これはもちろん、イラン紛争の沈静化を前提としている。また、重ねて指摘するが、株式市場は「シナリオ次第」の予想しか織り込んでおらず、レジーム転換が起きた場合への備えが債券・コモディティ市場に比べて不十分と言える。

リスク選好姿勢が続きVIX指数のバックワーデーション(先物市場で期先の価格の方が期近の価格よりも低くなる「右肩下がり」の状態)がボラティリティの高まりは一時的なものと示唆している状況は、テクノロジー・セクターの投資を中心に市場の期待を引き続き下支えしている。しかし当委員会では、楽観的な基本シナリオにおいてすら、バリュエーションがさらに上昇する可能性は低いとみている。むしろ、企業が業績において結果を出しこれまでの高水準のバリュエーションを正当化することが極めて重要となる。主要なリスクは現在の均衡状態が持続せずに、対供給での需要不足ではなく流動性・資金調達環境の悪化によってサイクルが転換する可能性だ。一方、株式リターンのばらつきが広がる(不確実性が増す)のに伴い、バリュー株や景気敏感株へのスタイル・ローテーションが進むかもしれない。

留意点:当委員会では米国経済は安定的なプラス成長が続くと予想しているが、これはイラン紛争が近く沈静化に向かうことを前提としている。紛争が長期化すればするほど、本稿の最終セクションで説明しているようなリスクが顕在化して堅調な軌道にある米国の実質成長ですら損なわれる可能性が高まる。


チャート3:テクノロジー関連の貿易は世界的に活況

チャート3

注:アジアにはカンボジア、中国、インド、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、シンガポール、台湾、タイ、ベトナムが含まれる。
出所: IMF 世界経済見通し(WEO) 2025年9月)

日本:構造的な強みが交易条件ショックのリスクに対する緩衝材に

日本に対する当委員会の見方はポジティブであり、今後1年の基本シナリオとしては緩やかながら潜在成長率を上回るGDP成長率(前年同期比0.6%~1%台前半)を予想している。ただし、想定されるリスクの範囲はかなり大きい。いずれの四半期であれ、実質GDP成長率が前期比でマイナスとなるリスクは25%以下の確率で想定している。

賃金や労働力不足、そして積極財政の見込みは、これまでのところ国内の経済環境の追い風となっている。インフレ期待は上方に偏った状態が続き、これに伴って日銀は金融政策正常化を継続するとみている。イラン紛争をめぐって不透明感が強まっているため、日銀が利上げタイミングを先送りできる余地は限定的と言える。最近ようやく減速した生鮮食品を除くCPI(消費者物価指数)の上昇率が急反転するリスクがあるからだ。

積極財政は景気に奏功する内容と評価されており、特にテクノロジー投資に重点が置かれている。一方で、債券市場からの圧力により政府は過度な財政出動を避けるとみられ、懸念されていた「野放し」の財政拡張シナリオというテールリスクは低減している。前述した通り、長期債利回りは上昇傾向を辿る可能性が高いが、当委員会の基本シナリオでは秩序立った上昇になるとみている。とはいえ、原油価格や物流コストのショックが長期化した場合、インフレ圧力が強まり、日銀が後手に回らぬよう利上げペースの加速を迫られる可能性があることは、主要なリスクとして指摘しておきたい。

日本株については、今後の原油購入に伴うドル需要を見込んで進む円安が、当面のサポート要因になると予想される。また、企業利益予想の上方修正や財政拡張期待も日本株の追い風になるとみられる。当委員会の基本シナリオとしては、AI関連投資ブームからの波及的恩恵が続き、ハードウェアやインフラ、物理的なAIバリューチェーンにおいて日本が独自の役割を果たす、との見方を維持している。

一方で、この基本シナリオが状況に大きく左右されやすいことも認識している。当委員会では、イラン紛争が交易条件の悪化を招き、日銀が利上げを加速させるか後手に回るリスクを冒すかという政策ジレンマに直面する可能性を含め、複数の代替シナリオについて検討した。また、実質賃金の堅調な伸びは消費にとって追い風であるものの、一部のセクターでは国内でさらなる供給ショックの発生する可能性が依然としてある。そうした代替の難しいセクターの1つとして挙げられる建設セクターは、内需が強まったとしても国内の労働力不足から大きな打撃を受けるだろう。

このような理由から、2026年が進むにつれて、今後数四半期の企業利益成長は逆風に見舞われるかもしれない。長期金利の上昇が利益成長の足かせとなる可能性があり、積極財政と輸入インフレ・リスクが重なればイールドカーブのベア・スティープ二ング(長期金利が上昇する形のスティープ化)のリスクが高まるだろう。

基本シナリオとしては、日銀が政策運営における信頼性を維持するとともに高市政権が市場との建設的な対話を重ねていくとみられることから、日本国債市場が混乱に陥るような事態は回避されると予想している。そして、対外金利差が縮小するのに伴い、円安は徐々に是正されていく可能性があるとみている。ドル円相場は本稿執筆時点で160円近辺にあるが、今後1年以内に150円を下回る水準まで戻すだろう。

チャート4:高まる積極財政の見込み

チャート4

注:一般政府の構造的プライマリーバランス(基礎的財政収支)は、景気循環調整後のプライマリーバランスに対し、資産価格や一次産品価格の変動など景気循環とは無関係な幅広い要因を加味して詞整したもの。
出所:IMF「世界経済見通し(WEO)」(2026年1月)

欧州:緩やかな経済成長が見込まれるがエネルギー・ショックの影響を受けやすい

欧州市場は、世界経済の成長継続、ECBによる金融緩和、そして米国よりも緩和的な金融環境の恩恵を受けてきた。以降、ECBは政策金利を2%強の中立水準に維持することにしたようだ。欧州はエネルギー・ショックや世界的な物流ショックが長期化した場合に依然として影響を受けやすく、エネルギーコストが再び上昇すれば企業収益の上振れも影を潜める恐れがある。

とはいえ、ユーロ圏の経済成長予想はすでに保守的であり、下方修正される余地は小さいとも言える。前四半期以降、ユーロ圏のファンダメンタルズおよび債券市場に関する予想は、そのばらつき度の拡大が米国や日本に比べて小幅にとどまっている。基本シナリオとして、今後1年のユーロ圏のGDP成長率は1%台半ば近辺で安定的に推移し、総合インフレが2%未満にとどまる一方、コアインフレは同期間内にECBの目標である2%に向けて鈍化していくと予想している。

株式市場の観点から見ると、欧州は依然、短期的な利益成長の加速ストーリーというよりも、相対的な割安感と分散投資の機会として捉えられる。当面のところ、欧州のバリュエーションは米国に比べてかなり低い水準にとどまると予想され、特に米国テクノロジー・セクターを中心とした株式のリスクプレミアム・ショックの可能性に伴うテールリスクが高まっているなか、分散投資先としての有効性を裏付けている。

中国:成長鈍化はすでに織り込み済みで今後の見通しはポジティブ

中国は年間GDP成長率の目標を5%から4.5~5%に下方修正したが、この悪材料はすでに市場に織り込まれているように見受けられる。最近のデータによると、第1四半期の経済指標は産業・消費の両分野で市場予想から上振れしており、経済成長率が修正後の目標レンジの上限に向かっていることを示唆している。当委員会では、今後1年の経済成長率が目標レンジの半ばから上限で推移するとみている。

インフレが依然低水準にあることから、的を絞った財政出動や産業支援が実施される可能性があり、当委員会ではこれが今後1年において景気へのプラス要因になり続けると予想している。中国は消費者を直接対象とする財政出動については積極的に行っていないが、この姿勢は不透明感の強い足元の局面において財政余力を温存したいという意向を反映しているのかもしれない。一方で、予定されている同国の財政政策は決して緊縮的なものではない。政策の基調としては引き続き供給サイドとテクノロジー向け投資が重視されており、同国の(輸入化石燃料から再生可能エネルギーへの長年の投資にわたる)戦略的なエネルギー源の分散化が奏功する可能性がある。

世界第2位の経済大国である中国は、現在起きているエネルギー・物流ショックから影響を受けやすい状況が続いており、したがって当委員会では、同国のGDP成長率が新たな目標レンジである4.5~5%を下回るリスクについて、25%以下の確率で想定している。しかし、同国が近年進めてきたエネルギー源の分散化がエネルギー・物流ショックに対してある程度の緩衝材となり、結果として目標レンジの上限に近い経済成長率が達成される可能性もある。

中国株式市場では好調な企業利益成長が予想されているが、他地域の株式市場と同様、交易条件ショックが起きた場合のリスクは十分に織り込まれていない可能性がある。逆に、政府の新5ヵ年計画においてAIインフラだけでなくバイオテクノロジーやエネルギー・インフラを含めたテクノロジー投資が重視されていることから、政府が民間セクターに対して規制を強化するリスクは2022年に比べて低いと言えるかもしれない。

一方、人民元政策は緩やかな通貨上昇と控えめな反景気循環的スタンスとを両立できている模様で、人民元高は交易条件ショックが起きた場合に有効なバッファーとなり得る。香港株式市場は、中国株式市場の回復を追い風にしながら引き続きEPS(1株当たり利益)成長率の改善を示すと予想される。ただし、エネルギー・物流の供給ショックをめぐる足元の不透明感から、バリュエーションには下方圧力がかかり続ける可能性がある。


チャート5:中国は2026年に財政出動を拡大

チャート5

出所:PRC Macro


チャート6:中国の対外貿易におけるドル離れ

チャート6

出所:Wind、PRC Macro

グローバル為替・コモディティ市場

当委員会の基本シナリオは変わらず、市場の注目が徐々に適正価値への調整へと移行するのに伴いドルが全面安になるとみている。債券市場と同様、委員会メンバーによる為替の予想はばらつきが前四半期に比べて拡大しており、特に米ドル/円においてその傾向が顕著となっている。適正価値への調整は、円の(無秩序なリスクオフの動きによる急騰ではなく)緩やかな上昇が部分的に牽引すると予想されるが、中国が貿易・投資の両面で人民元の国際化推進を目指していることから、人民元の着実な上昇も重要な要因の1つになるとみられる。

コモディティ輸出国の通貨は、エネルギー・ショックがインフレ税(物価上昇に伴い通貨の価値が下がることで政府債務の返済負担が実質的に軽くなること)のような性質を見せるのか、それとも世界的な需要の堅調さを示すものなのかによって、反応が変わるかもしれない。ドル/円は前述の通り今後1年で1ドル=150円を割り込む水準へと徐々に下落すると予想しており、ユーロ/米ドルは1ユーロ=1.20ドルに向けてユーロがやや反発、オーストラリアドルは対米ドルで0.70台半ばへと反発するとみている。

原油市場はショックの恒久化シナリオを依然織り込んでおらず、テールリスクが高まるなかで委員会メンバーによる予想はばらつきが前四半期に比べて著しく大きくなっているものの、基本シナリオとしてはショックは悪化するよりも和らぐ方向にあるとみている。金価格は高止まりしているが、最近ではリスク資産とともに大幅上昇したものの、原油高になると上昇分を吐き出す傾向を示した。金およびコモディティ全般の見通しは、ボラティリティの高まりが予想されることを反映して前四半期に比べばらつきが大きくなっている。紛争やエネルギー供給の混乱に関連するリスクは決して軽視できないものであり、コモディティ市場のボラティリティは引き続きショック波及のサインとして注視していくべき要因である。

見通しに対する主なリスク:レジーム・シフトを注視

前四半期に比べて不透明感が強まっており、基本シナリオにおいても常にモニターすべき留意点やリスク要因を付記せざるを得ない状況となっている。委員会メンバーが指摘した主なリスク要因は大まかに以下の5つのカテゴリーに分けられる。

1. エネルギー・ショックと中東情勢の悪化(発生確率10~40%、影響度「大」)
委員会メンバーの最も多くが言及したリスク・シナリオであり、影響度が大きいとの見方も一致したが、主観的な発生確率には大きなばらつきが見られた。代表的なシナリオは、イラン紛争がエスカレートして中東地域全体を巻き込んだ衝突または代理戦争に発展するケースなどだが、そうしたシナリオでは、ホルムズ海峡における海上輸送の混乱長期化や海上保険の打ち切りが重大なリスクとみなされた。
原油価格の根強い高止まりとその波及的影響は、スタグフレーション・リスクを高めるとみられる。ショックが長期化した場合、各国中央銀行は需要減退に対応しようとも世界的にインフレが再燃するなかで金融緩和余地が限定的となり、資本コストや生活費の上昇を通じて投資と消費の両方にブレーキがかかりかねない。こうした状況が長引けば、株式市場では投資家のリスク回避姿勢が強まりボラティリティが高まる可能性がある。

2. インフレ長期化/世界的な金融引き締めショック(発生確率50%、影響度「中~大」)
紛争に伴う資本コストや生活費の上昇リスクに属さないが、無関係ではない分野として、中央銀行による政策調整ミスのリスクを指摘する委員会メンバーも少数ながらいた。当該リスクを認識したメンバーは、影響度が大きいとともに発生確率も高いとの見方を示した。
このシナリオでは、紛争に伴うエネルギー・ショックだけでなく、テクノロジー分野における投資需要の大幅拡大の継続も要因となって、インフレ圧力が強まる。各国中央銀行がインフレ期待の根強さを過小評価してしまった場合、たとえエネルギー供給ショックが新たに発生しなくても、金融引き締め環境が従来の想定以上に長期化する可能性がある。そうなれば、利下げ余地が限定され経済成長の重石になるだろう。このシナリオにおいては、実質金利の上昇、株式市場のバリュエーション水準の低下、債券市場のボラティリティの上昇が見込まれる。

3. AI投資/テクノロジー・サイクルの中断(発生確率20~50%、影響度「中~大」)
このリスク・カテゴリーに入るシナリオは、信用環境のタイト化を受けてAI設備投資ブームが後退する可能性に焦点を当てている。過度な競争によりサプライヤーの利益率が圧迫される可能性があり、また最先端のテクノロジーについていけない企業はビジネスモデル陳腐化リスクの加速に直面しかねない。
資金調達コストが急激に上昇する事態となれば、その影響はことさら重大なものとなるだろう。そのようなシナリオ下では、ハイパースケーラー(巨大データセンターを運用し膨大な計算能力とストレージをオンデマンドで提供するクラウドサービス事業者)の投資収益率は信用コストの高騰を受けて悪化し、投資ブームが急速に冷え込んで株価の重石となり得る。こうした展開がテクノロジー・セクターのみにとどまる場合は、株式市場でセクター単位でのバリュエーション見直しが進み、テクノロジー・セクターからの資金シフトが起こるとともに、AI設備投資の持続可能性をあらためて見極めようとする動きが出てくるとみられる。また、バリュエーション見直しの動きが他のセクターにも広がることで、株式市場のボラティリティが一時的に高まる可能性がある。

4. プライベート・クレジット・ショック/金融システムの逼迫(発生確率15~25%、影響度「中~大」)
プライベート・クレジット市場のストレスは同市場内に収まるというのが引き続き基本シナリオだが、金融システム全体に波及するリスクも指摘された。その代表的なシナリオは、プライベート・クレジット・ファンドにおける解約制限を受けて流動性が逼迫し、金融環境のタイト化を招くというものだ。このシナリオでは、地方銀行がストレスに晒されるほか、影響がパブリック・クレジット市場へと波及して信用スプレッドが拡大し、リスク資産全般にプライシング見直しの動きが広がっていく可能性もある。また、発生確率は低いとみられるがより深刻なテールリスクとして、金融システム全体に即座に大きな影響が及ぶのではなく、当面の債務返済猶予の動きを受けてバランスシートの逼迫が長期化するリスクだ。そうなれば景気減速が長引きかねない。

5. 長期金利や財政の持続可能性をめぐるショック(発生確率15~25%、影響度「大」)
財政の持続可能性が脅かされる可能性は、過去の景気サイクルに比べて高まっていると言える。理由はシンプルで、多くの先進国で債務残高の対GDP比率が過去最高水準にあるからだ。こうしたリスクは、財政拡張やプライベート・クレジットの拡大、そしてイラン紛争を受けたインフレ期待の高まりといった要因が重なることによって増幅しやすい。
日本の財政状況はリフレに伴い改善しているように見えるものの、債務残高の対GDP比率はグロスおよびネット・ベースともに依然高水準にある。最近の日本国債市場は積極財政の予想受けてボラティリティが高まっており、財政の信頼性に対する認識に長期債が敏感に反応することを浮き彫りにしている。さらなる財政拡張と日銀による金融引き締めの遅れが重なれば、日本国債イールドカーブのベア・スティープ二ングを招いて、その影響が企業の資金調達金利や家計の借入コストに波及する可能性がある。


リスク要因が交錯するシステミック・ショックについての考察

委員会メンバーが指摘したリスク要因全般に共通する重要なテーマが浮かび上がってくるのが、潜在的リスク・シナリオの相互関連性の高まりだ。認識されるテールリスクの大部分を占めるのはエネルギー関連や地政学面の動向だが、こうした動向はインフレや政策調整ミスのリスクとも関連性がある。インフレが予想以上に長引けば、各国中央銀行は成長鈍化シナリオと成長加速シナリオのいずれであっても金融緩和余地が限定されかねない。

また、AI設備投資ブームの反転がさらなるリスクをもたらす可能性があるが、このリスクもクレジット市場の流動性環境のタイト化や資金調圧コストの上昇の可能性と無関係ではない。また、財政の信頼性が保たれるかという点や、中央銀行が独立性を維持してインフレ期待を制御していくことができるかという点も、引き続き密接に結びついたリスク要因である。

通常、複数のイベントが同時に発生する確率は個々のシナリオの発生確率より低いものだが、複数のショックが組み合わさると非線形的な影響をもたらす可能性があり、個々のショックの影響度を足し合わせたものをはるかに上回る場合もある。したがって、当委員会では、システミックなショックは発生確率がゼロではなく、仮に発生した場合には極めて大きな影響をもたらすとみている。


チャート7:国内金利の変動における世界的ショックの寄与度

チャート7

注: 上記チャートは、フォーブス氏、ハ氏、コーゼ氏の研究(2026年)で開発されたFAVARモデルに基づき、40ヵ月間における国内政策金利の予測誤差分散分解(総分散に占める割合、先進国13ヵ国の平均)を示したもの。同モデルは4つのグローバル変数(GDP成長率、インフレ率、金利、原油価格)と3つの国内変数(GDP成長率、インフレ率、金利)で構成されている。
出所:CEPR(経済政策研究センター)「From earth to heaven: The changing drivers of monetary policy」


補足1:GISCの見通しのガイダンス


世界のマクロ経済指標

世界のマクロ経済指標


中央銀行の政策金利、為替、債券およびコモディティ

中央銀行の政策金利、為替、債券およびコモディティ

株式


株式

グローバル投資戦略委員会による中期展望(2026年第2四半期)

グローバル投資戦略委員会による中期展望(2026年第21四半期)