本稿は2025年12月25日発行の英語レポート「Markets outlook: navigating 2026」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。
はじめに
2026年を迎えるにあたり、市場は機会と不確実性が複雑に絡み合う状況に直面している。金融政策の転換やテクノロジーの加速的進歩、地政学的な潮流の変化が、あらゆる資産クラスにわたって投資判断の材料となっていくだろう。当社アモーヴァ・アセットマネジメントの「2026年の見通し」シリーズでは、各国・地域の市場からグローバル市場やマルチアセットに至るまで、今後の展望を包括的にカバーしている。また、これらを補完する幅広いマクロ的視点として、経済成長の軌道やインフレ動向、中央銀行の政策に関する考察も提供している。投資家の皆様が急速に変化する世界情勢を切り抜けていくにあたり、これらのレポートが一助となれば幸いである。
グローバル投資戦略 2026年の見通し
マクロ経済のテーマ・リスト:来たる年のグローバル市場・経済の展望
フィンク直美/チーフ・グローバル・ストラテジスト
投資家にとっての課題は、次の産業革命への電力供給を模索し続ける世界で、景気循環的にミスプライスされたベータと長期的なアルファを見分けることにある。
- 2026年以降の世界の成長ドライバー:持続可能な成長のカギとなるのは、イノベーションと強固な制度である。生産性の向上が依然見込めず調整リスクが高まるなか、楽観ムードの陰には脆弱性が隠れている。
- 米国の経済成長:コロナ後の例外主義は後退しつつある。移民面の制約と疑問視される AI投資ブームの持続可能性から、生産性を重視する企業に選別的に注目していくことが必要。
- 日本:インフレとガバナンス改革に進展の兆候。外交およびインフレのリスクがあるなか、国内におけるデジタル化、脱炭素化、フュージョン・エネルギー技術への投資が極めて重要。
- 債券:世界的に公的債務が高水準にあり債券発行が加速していることから、デュレーション・リスクが高まっている。分散投資、そしてショックに備えたバッファーの維持が肝要。
- 通貨と経常収支:不均衡が根強い。人民元は過小評価されており中国政府は同通貨の柔軟性を高める可能性があるが、そうなれば、外貨準備の米ドルからのシフトが起こり円安圧力が緩和され得る。
- アジアのエネルギー優位性:中国が再生可能エネルギーで余剰エネルギーを確保できれば、AI競争における戦略的資産となるかもしれない。計算効率の主要な制約要因は、エネルギー効率がトランジスタ密度にとって代わる可能性がある。
- 欧州:民間セクターで実現されたフュージョン技術の飛躍的前進により、フュージョン・エネルギーの商業化までにかかる時間が短縮されるとみられる。制度面のイノベーションと債務手段の共有が進めば、財政統合が強化され得る。
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グローバル・マルチアセット 2026年の見通し
インフレが根強いなか慎重を期しつつ好機を捉えていくバランス感覚が求められる
マルチアセット・チーム
2026年は経済成長が堅調に推移しそうな兆しがあり、企業収益の伸びを支えるとみられるものの、バリュエーションが割高な水準にあることから様子見モードを維持している。
- 米FRBは市場予想ほど積極的に利下げを進めない可能性があり、当社では2026年はリスク資産についてより慎重な見方をしている。
- バリュエーションは歴史的にみても高水準での推移が続いており、短期的な成長シグナルは良好も、長期的なリターンをめぐる懸念が強まっている。
- インフレ再燃を受けて長期国債には慎重な姿勢、イールドカーブがスティープ化しているソブリン債に注目。
- 債券と株式が正の相関を示してボラティリティが増幅される可能性があり、イールドカーブの中期ゾーンの債券や米ドルが重要な分散投資先となり得る。
- 米ドルは、ポジティブ・キャリーやリスク資産との逆相関が追い風となり、際立った分散投資効果を発揮すると期待される。
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グローバル株式市場 2026年の見通し
現在のマクロの潮流から影響を受けにくい勝者を見極める
グローバル株式チーム
この先の15年間は、これまでの15年間とは様相が異なるだろう。
財政赤字を賄うための国債発行の急増や、貿易摩擦に伴う地政学的リスク、AIに係る旺盛な電力需要が招くインフレ圧力などを受けて、実質金利は世界金融危機後の低水準に比べて高い水準に構造的にとどまるとみられる。
- 2025年はAIインフラ投資が急拡大した。2026年にはハイパースケーラーの設備投資額が6,000億米ドルに達し、テクノロジー、資本財・サービス、公益事業セクターの株価上昇の原動力になっていくと見込まれる。
- 2025年は、投機的なグロース銘柄が急騰する一方で、クオリティ株は苦戦してグロース株とのパフォーマンス格差がここ20年で最大となり、市場の牽引役が極めて限定される展開となった。
- クオリティ株のバリュエーションは割安な水準にあり、過去の経験則によると反発に転じる可能性が高く、長期投資家にとっては魅力的な投資機会をもたらしていると示唆される。
- 投資家のリスク選好意欲は引き続き旺盛で、一部ではバブル的状態も見られており、市場はセンチメントの変化の影響を受けやすい状態にある。その誘因になり得るものとしては、AIテーマの息切れ、地政学的緊張の高まり、貿易面の混乱、信用逼迫、労働市場の悪化などが挙げられる。
- 銘柄選択で超過収益を創出していくには、そうしたマクロ情勢の影響を受けにくい勝者を見極めることが不可欠となる。実質金利が上昇すれば、遠い将来の有望性よりも当面の利益が重視されるようになるだろう。
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日本株式 2026年の見通し
ガバナンス改革と戦略的政策により「続伸の年」への舞台が整う
日本株式チーム
企業がここ数年の前進をさらに発展させられる環境が整っており、2026年は日本株式市場が再び成長を見せる年となると考えている。
日本の株式市場は、高市新政権と日米関係の強化に支えられた追い風の政治・経済・政策環境で2026年を迎える。
コーポレートガバナンス・コードの改訂や大量保有報告の新ルールなどガバナンス改革が進めば、企業による効率的な資本活用が加速して利益が向上するとみられる。
株主エンゲージメントやM&Aがより活発化する環境下で、企業価値が引き出されるきっかけが継続的に生まれるだろう。
日米関係は、高市首相の下でさらに強化され、日本企業に対する投資家の信頼を支え続けていくものと予想される。
高市政権は財政による着実な支援、規制改革、日銀との連携を通じて、より信頼される国内環境の構築に貢献している。
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アジア株式市場 2026年の見通し
世界の活力源である地域で改革とイノベーションを投資機会として捉える
アジア株式チーム
変化が見込まれる4つの主要分野(中国のAI、中国のヘルスケア、インドの復活、シンガポールのEQDP)は、アジアの投資機会の幅広さと厚みを示している。
- 2026年を迎えるにあたり、当社ではアジア株式市場に対してポジティブな見方をしている。マクロ経済、政策および市場固有の要因の相乗効果で、アジア地域はファンダメンタルズ環境が改善している。
- FRBの金融緩和への転換と米国の財政拡張を受けて、アジアへの資本流入が再び活発化する状況が整っている。
- 中国が安定化を示す一方、インドは回復の兆しを見せている。
- アジアでは、韓国やシンガポールを中心に改革が加速している。
- 2026年にアジアで投資機会をもたらすと予想される主要テーマとしては、中国のAI、中国のヘルスケア、インドの消費回復、シンガポールの株式市場開発プログラムの4つが挙げられる。
- アジアは安定と変革という魅力を兼ね備えており、長期的な資産の配分先として有力な選択肢と言える。
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グローバル債券市場 2026年の見通し
現在のマクロの潮流から影響を受けにくい勝者を見極める
グローバル債券チーム
2026年は世界の経済成長が緩やかに減速すると予想しており、各国間での政策の乖離や貿易をめぐる根強い不透明感、そして世界の債券・為替市場におけるレラティブバリュー機会の変化を特徴とする年になると想定している。
- 2026年の世界の経済成長は減速すると予想されるが、地域によって状況が大きく異なるとみられる。各国中央銀行間で金融政策が乖離することを受けて、金利・為替市場に投資機会が生まれるだろう。
- 米FRBは政策金利を年央までに3%程度のターミナルレートへ引き下げていくとみられ、これが米国資産への追い風となるだろう。
- AIテーマが著しく過熱し始めてAI関連の資金調達がバリュエーションの見直しにつながるような事態となった場合、サステナブル債は有効なヘッジ手段となり得る。
- ハイパースケーラー(大規模なクラウドサービスを構築・運用する企業)が投資計画を実行しその成果を出すことができなかった場合、収益性やキャッシュフローが圧迫されかねず、より深刻なケースではハイイールド級へと格下げされるリスクがある。
- クレジット市場の最大の焦点は、2025年の良好なパフォーマンスを2026年も再現できるかである。
- ドル安に加え世界経済が大幅に悪化することなく緩やかな成長を続ける環境は、概して新興国市場の追い風となるだろう。
- ニュージーランドは、2026年に注目すべき先進国市場として際立っている。
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アジア債券市場 2026年の見通し
アジアの見通しはポジティブ、主役は財政政策に
アジア債券チーム
アジアの各中央銀行は、政策余地を温存しながら追加利下げペースを慎重に調節していく可能性が高い。
貿易をめぐる緊張が落ち着き経済成長の足取りが強まるなか、米国との金利差の変化は、域内の一部の通貨にとって追い風となるだろう。
- マクロ環境:アジアは、貿易環境の改善、落ち着いたインフレ、好調なファンダメンタルズを伴って2026年を迎えようとしており、外部圧力が緩和するなかで経済成長率予想が上方修正される可能性がある。域内の各国中央銀行は利下げに対して慎重に臨むとみられるため、経済成長を支える役割を担うのは主に財政政策となるだろう。
- 中国:第15次5ヵ年計画では、消費の拡大とテクノロジー分野での自立促進が引き続き進められる。これらの取り組みが、「反内巻」運動とともに、より持続的な経済成長を支えディスインフレやデフレの回避に寄与していくとみられる。また、アジア地域の経済的な融合が進むなか、貿易・投資・決済における人民元の役割が拡大を続けている。
- インド、インドネシア、フィリピン:魅力的な実質利回り、落ち着いたインフレ、財政健全化への取り組みが、国債に対する需要の追い風になるだろう。
- シンガポール:経済成長が鈍化しておりインフレも安定していることから、追加の金融緩和が実施されるとみられる。シンガポール国債は概ね米国債に追随した動きを見せると予想され、発行額がやや増加するものの堅調な需要が続くだろう。
- アジア・クレジット市場:底堅いファンダメンタルズと良好な需給によってバリュエーションが高水準に保たれるなか、慎重ながらもポジティブな見方をしている。リターンの源泉は主にキャリーとなるだろう。米国の政策見通しが変化する可能性や地域固有のセクター・政治的リスクを踏まえると、選別的なアプローチが不可欠。
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